ユニットポリイオンコンプレックスを起点とする標的組織特異的核酸デリバリーへの挑戦

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H02098
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 宮田 完二郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50436523)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 核酸医薬デリバリー / ポリイオンコンプレックス / ブロック共重合体

研究実績の概要

本研究の目的は、がんを中心に様々な生体組織へと核酸医薬をデリバリーする材料技術を確立することである。前年度までに、1分子の核酸医薬（siRNAやアンチセンス核酸(ASO)）と1~2分子のY字型高分子から形成されるユニットポリイオンコンプレックス（以後ユニットPIC）を創製することで、脳腫瘍モデルや膵臓がんモデルへ核酸医薬を効率良くデリバリーすることができ、結果として優れた抗腫瘍効果を得ることに成功した。この成果を踏まえ、本年度は、ユニットPICのさらなる機能強化、および未検討の核酸医薬（アプタマー）への応用可能性を検討した。前者に関して、ユニットPICの静脈内投与後の血中滞留性強化を目指し、核酸医薬の化学構造の寄与を評価した。結果として、ホスホロチオエート修飾や架橋型核酸構造を多く含む核酸医薬を用いることで、ユニットPICの血中滞留性が劇的に改善することが明かになった。ホスホロチオエートの疎水性や架橋型核酸の低エントロピー効果により、核酸医薬とY字型高分子の間の結合力が上昇したためと考えられるが、詳細なメカニズムに関してはさらなる評価が必要である。次いで、ユニットPICの細胞内移行能を強化するために、分子内に疎水性セグメントを有する高分子を用いて改良型ユニットPICを調製した。結果として、疎水性セグメントを含むユニットPICは、含まない系に比べて３倍高い細胞内移行能を示すことが明らかになった。後者に関して、アプタマーにY字型高分子を添加した場合も、ユニットPICが形成することが確認された。このユニットPIC形成により、アプタマーの分解酵素耐性が大幅に上昇することが明らかになった。一方、ユニットPIC形成に伴い、アプタマーの標的タンパク質認識能が低下する現象も見られたことから、安定性と活性を両立する新たなY字型高分子設計の必要性も示唆された。

現在までの達成度 (段落)

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和元年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 核酸医薬のドラッグデリバリー (2020)
  • 著者名/発表者名: 内藤瑞、宮田完二郎
  • 雑誌名: Clinical Neurosicence 巻: 38 ページ: 314-318
• [雑誌論文] In vivo rendezvous of small nucleic acid drugs with charge-matched block catiomers to target cancer (2019)
  • 著者名/発表者名: S. Watanabe, K. Hayashi, K. Toh, H. J. Kim, X. Liu, H. Chaya, S. Fukushima, K. Katsushima, Y. Kondo, S. Uchida, S. Ogura, T. Nomoto, H. Takemoto, H. Cabral, H. Kinoh, H. Tanaka, M. R. Kano, Y. Matsumoto, H. Fukuhara, S. Uchida, M. Nangaku, K. Osada, N. Nishiyama, K. Miyata, K. Kataoka
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 10 ページ: 1894
  • DOI: 10.1038/s41467-019-09856-w
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Synthetic miR-143 exhibited an anti-cancer effect via downregulation of K-RAS networks of renal cell cancer cells in vitro and in vivo (2019)
  • 著者名/発表者名: T. Takai, T. Tsujino, Y. Yoshikawa, T. Inamoto, N. Sugito, Y. Kuranaga, T. Soga, K. Hayashi, K. Miyata, K. Kataoka, H. Azuma, Y. Akao
  • 雑誌名: Molecular Therapy 巻: 27 ページ: 1-11
  • DOI: 10.1016/j.ymthe.2019.03.004
  • 査読あり
• [雑誌論文] Anti-cancer effects of a chemically modified miR-143 on bladder cancer by either systemic or intravesical treatment (2019)
  • 著者名/発表者名: Y. Yoshikawa, K. Taniguchi, T. Tsujino, K. Heishima, T. Inamoto, T. Takai, K. Minami, H. Azuma, K. Miyata, K. Hayashi, K. Kataoka, Y. Akao
  • 雑誌名: Molecular Therapy: Methods and Clinical Development 巻: 13 ページ: 290-302
  • DOI: 10.1016/j.omtm.2019.02.005
  • 査読あり
• [雑誌論文] Smart oligonucleotide delivery by multifunctional block copolymers (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Hayashi, K. Miyata
  • 雑誌名: Material Matters 巻: 14 ページ: 110-114
  • オープンアクセス
• [学会発表] 送達困難とされる臓器・組織への核酸医薬デリバリーを目指して (2020)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎
  • 学会等名: 核酸創薬研究部門 第2回シンポジウム
  • 招待講演
• [学会発表] Y-shaped block catiomer (YBC) forms "Unit polyion complex" with siRNA and ASO: a novel DDS alternative to LNP (2019)
  • 著者名/発表者名: T. Yoshida, M. Masai, H. Taniguchi, Y. Kondo, N. Nishiyama, K. Miyata, S. Akinaga, K. Kataoka
  • 学会等名: 15th Annual Meeting of the Oligonucleotide Therapeutics Society
  • 国際学会
• [学会発表] Nanopharmaceutical design to break through biological barriers (2019)
  • 著者名/発表者名: K. Miyata
  • 学会等名: LINK-J/UCSD Life Science Symposium 2019
  • 招待講演
• [学会発表] 1分子核酸を内包する極小核酸キャリアの構築と難治がん治療への展開 (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎, 渡邉秀美代, 林光太朗, 藤加珠子, キムヒョンジン, 茶谷洋行, 福島重人, 内藤瑞, 片岡一則
  • 学会等名: 第41回日本バイオマテリアル学会大会
• [学会発表] 高分子材料の精密設計による核酸デリバリー (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎
  • 学会等名: 第14回ナノ・バイオメディカル学会
  • 招待講演
• [学会発表] 高分子材料を用いたドラッグデリバリーのこれまでとこれから (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎
  • 学会等名: 第34回高分子学会関東支部茨城地区 若手の会交流会
  • 招待講演
• [学会発表] siRNA送達に向けたカチオン性ポリアミノ酸の検討 (2019)
  • 著者名/発表者名: 林光太朗, 福島重人, 西山伸宏, 宮田完二郎, 片岡一則
  • 学会等名: 第68回高分子討論会
• [学会発表] 送達困難とされる臓器・組織への核酸デリバリー (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎
  • 学会等名: 日本核酸医薬学会DDS部会主催合同サテライトシンポジウム2019
  • 招待講演
• [学会発表] 極小サイズのsiRNA送達システムの構築とそのすい臓ガンモデルへの効果 (2019)
  • 著者名/発表者名: 林光太朗, 福島重人, 藤加珠子, 西山伸宏, 宮田完二郎, 片岡一則
  • 学会等名: 第35回日本DDS学会
• [学会発表] 送達困難な標的組織への核酸医薬デリバリー (2019)
  • 著者名/発表者名: 宮田完二郎
  • 学会等名: 第35回日本DDS学会
  • 招待講演
• [図書] 医薬品モダリティの特許戦略と技術開発動向 (2019)
  • 著者名/発表者名: 内藤瑞、宮田完二郎
  • 総ページ数: 676
  • 出版者: 技術情報協会
  • ISBN: 978-4-86104-749-7
• [備考] 宮田研究室ホームページ
  • URL: http://www.bmm.t.u-tokyo.ac.jp/index.html