研究課題/領域番号 |
17H02099
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松崎 典弥 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00419467)
|
研究分担者 |
井上 正宏 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 総括研究員(生化学部門長) (10342990)
西原 広史 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, がんゲノム医療センター長 (50322805)
狩野 光伸 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80447383)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 三次元組織 / 腫瘍 / 間質 / 灌流培養 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の研究に取り組んだ。 i-1)患者由来の腫瘍組織からのCTOSの作製:これまで作製してきた大腸がんと膵がん患者組織から回収したCTOSをマウスに移植して増幅し、in vitroで培養を繰り返すことでCTOSの株を作製できた。大腸がんでは、2種以上の株化CTOSを作製することができた。 i-2)CTOSとCAFを用いた腫瘍-間質3次元組織体の構築:大腸CTOSを用いて間質線維芽細胞を導入した3次元組織を構築した。皮膚線維細胞(NHDF)と市販の肺がん間質線維芽細胞(CAF)を用いて作製した。得られた組織体の組織学的評価と細胞生存率測定では、両者に顕著な差は見られなかったが、がん細胞の移動速度を評価した結果、CAFの方が早いことがわかった。今後、より詳細に評価する予定である。 ii-1)犠牲ゲルを用いた灌流可能な小血管構造の作製:カルシウムイオンに応答してゲル化するジェランガムを用い、血管構造の作製を試みた。直径約500um-1mmのジェランガムゲルを作製し、3次元組織内部に導入後、トリス緩衝液に浸漬することで溶解除去することが可能であった。さらに、血管内皮細胞を内壁に接着させることで血管化を試みた。血管内皮細胞の接着効率は80%以上となり、良好であった。その後、ポンプに接続して灌流培養することは可能であったが、径が小さいため安定しなかった。今後は、ポンプを用いない送液を試みる。チューブ構造を組織学的に評価し、また、教焦点レーザー顕微鏡観察からも確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた3つの研究課題をほぼ予定通り進めることができた。 患者由来の腫瘍組織からCTOSの株化を行うことが可能であった。また、CTOSとCAFを用いた腫瘍-間質3次元組織体を構築し、NHDFとの比較検討をした結果、がん細胞の移動速度に違いがあることを見出した。さらに、犠牲ゲルとしてジェランガムを用いて3次元組織体内部にチューブ構造を作製し、送液することが可能であった。ポンプを用いた送液では安定しなかったため、今後、ポンプを用いない手法を検討する予定である。
以上より、本年度予定していた研究はほぼ予定通り進めることができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、計画通り研究を進める予定である。 i-3)免疫細胞と毛細血管/リンパ管を有する腫瘍-間質3次元組織体の構築と組織学的評価:CTOSを用いて、免疫細胞と毛細血管、リンパ管を有する腫瘍ー間質組織体を構築する。構築された組織体を組織学的に評価し、がん細胞と免疫細胞の相互作用や血管との相互作用を評価する。 ii-2)小血管を有する腫瘍ー間質3次元組織体の構築と組織学的評価:ジェランガムを用いた手法により、灌流培養可能な3次元組織体を構築する。灌流をポンプを用いずに行うことで安定した循環培養を試みる。また、がん細胞の血管への浸潤等を組織学的または分子生物学的に評価する。 iii-1)再構築腫瘍ー間質組織体のがん-免疫細胞の相互作用解析:末梢血単球からTリンパ球を分化誘導し、組織体に導入することで、CTOSやTリンパ球、樹状細胞の相互作用を詳細に評価する。がん細胞とT細胞の相互作用を表面マーカー発現解析により評価する。また、免疫染色により局在を明らかにする。さらに、抗PD-1抗体を用いたイムノチェックポイント解析が可能かどうか検討する。
|