研究実績の概要 |
本研究では、電荷中和されたpDNAが規則的に折れたたまれるという特性を能動的に制御することにより、ポリプレックス内でのDNA分子フォールディングの制御による転写過程の効率化を通した高効率遺伝子導入を実現する。これまでに申請者がナノファイバー状ポリプレックスを形成することが明らかとしているカチオン性高分子(多分岐PEGを末端にもつpoly(L-lysine):maPEG-PLL)を基盤として、ポリプレックス表面での多分岐PEG密度を制御することによるポリプレックス形態(DNAフォールディング)制御を検討する。本年度は、多分岐PEG部をもたないカチオン性高分子(poly(L-lysine)ホモポリマー:PLL)の添加による制御を検討した。 maPEG-PLLとPLLを種々比率で混合した水溶液とpDNA水溶液を、混合溶液中のLysine残基数とDNAのリン酸エステル基数が等しくなるよう混合することによってポリプレックス溶液を調製した。得られた種々maPEG-PLL含率のポリプレックス水溶液について評価を行った。Dye exclusion assayによりmaPEG-PLL含率が30%以下に低下するとDNA凝縮が生じるが、30%以上においては効果的なDNA凝縮抑制が確認された。そこで、maPEG-PLL含率が30, 60, 90, 100%のポリプレックスについて原子間力顕微鏡観察により平均アスペクト比を評価した結果、maPEG-PLL含率の低下によりDNAフォールディングによるポリプレックス形態の変化(ナノファイバーからナノロッドへ)が生じ、maPEG-PLL含率によるポリプレックスのアスペクト比が制御可能であることが確認された。
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