研究課題
前年度に新たに見出したS19とTATの連結順序を利用して、初年度に使用を断念していたC末端で機能するサイクリン依存性キナーゼ阻害ペプチドp27KIP1やp53活性化ペプチドについても新たなコンストラクトを作製し、細胞内取り込みによる生育阻害活性を検証した。まず、p53活性化ペプチドをTAT-S19-eGFPのC末端に融合したタンパク質の発現用遺伝子を作成し、この融合タンパク質が細胞内においてペプチド医薬としての機能を有することを確認するために、この遺伝子発現用プラスミドをトランスフェクションしてMDM2過剰発現細胞内で発現させたところ期待通り細胞生育阻害活性が見られた。そこで、このp53活性化ペプチド融合タンパク質を大腸菌発現・精製し、MDM2過剰発現細胞に添加したところ、野生型p53を発現する細胞においてp53下流のアポトーシス関連因子であるp21の発現量の増加が観察されたことから、融合タンパク質が細胞質に送達していることが示唆された。また、同様にp27 KIP1融合タンパク質を前立腺がん細胞株に添加したところ、細胞生存率の減少と、内在性のがん抑制因子p27KIP1の発現量の増加を確認できた。また、我々が同定したS19-TATが抗体やペプチドだけではなく核酸の細胞質送達の促進にも適用できるかを確認するために、siRNAに配列非特異的に結合するRNA結合ドメインのC末端にS19-TATを融合したタンパク質を調製し、蛍光標識siRNAとの複合体をヒト培養細胞に添加し、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。その結果、TATのみを融合した場合と比べてS19-TATを融合すると細胞内の蛍光が強く観察され、siRNAの細胞内送達を確認できた。また、ARおよびAR-V7遺伝子の共通部分配列に対するsiRNAを用いた場合に、標的遺伝子がノックダウンされることをRT-qPCRにより確認できた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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