研究課題/領域番号 |
17H02105
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金井 浩 東北大学, 工学研究科, 教授 (10185895)
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研究分担者 |
高瀬 圭 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60361094)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医用超音波 / 血圧-血管径同時計測 / 動脈硬化症超早期診断 / 血管内皮機能評価 / 動脈壁粘弾性特性 / 正圧電効果 / 血圧-血管径ヒステリシス特性 / Voigtモデル |
研究実績の概要 |
まえがき:動脈硬化症の超早期診断には,血管内皮機能の評価が重要である.そこで我々は超音波プローブの正圧電効果を用いて血圧波形の計測が可能であることを示した.また,超音波の送受信に加えて血圧波形を同時に計測できるように改造した超音波プローブを作製し,血圧-血管径のヒステリシス特性を推定した.この計測法において,弾性率推定には血管断面が円を仮定している.圧力波形を得るためには,超音波プローブを計測部位に押し当てると,血管が押し潰され断面が楕円形になり,弾性率推定に影響が生じる.本年度は,血管が押し潰されることによる弾性率推定値への影響を調べた. 実験:192 ch のリニアアレイプローブを改造し,中心1素子を超音波の送受信部と電気的に切り離すことで,圧電素子からの信号を外部へと取り出した.この改造プローブを超音波診断装置に接続し,超音波の送受信により計測したRF信号に位相差トラッキング法を用いて,血管径を取得した.血圧波形の計測では,圧電素子からの出力電圧を積分することで血圧波形を取得した.血圧の絶対値を得るため,右手において収縮期と拡張期血圧を計測し校正した. 結果:プローブ押圧を変え,血圧と血管径の同時計測をした。押圧を強くすると,縦方向の血管径が小さくなる.このヒステリシス特性からVoigtモデルを仮定して弾性率を推定したところ,押圧を強くした場合と弱くした場合で,それぞれ125 kPa,175 kPaと得られた. 結言:単一超音波プローブを用いて血管壁の弾性率を推定する際の,プローブの押圧による血管の潰れ度合が弾性率の推定結果に与える影響について調べた.プローブによる押圧が大きくなる(血管の縦横比が小さくなる)につれて弾性率が小さく推定されることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波の送受信に加えて血圧波形を同時に計測できるように改造した超音波プローブを用いて,血圧-血管径のヒステリシス特性の推定を行った. この計測法において圧力波形を得るためには,超音波プローブを計測部位に押し当てる必要がある.ヒステリシス特性から弾性率を推定する際,血管断面が円であることを仮定している.しかし,計測時に血管が押しつぶされることにより断面が楕円形になってしまい,弾性率の推定に影響が生じうる.本年度は,弾性率推定の再現性を得ることを目指し,血管が押しつぶされることによる弾性率推定値への影響を調べた. これらは,新たに製作した超音波プローブを用いた実験で初めて明らかになったことといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,縦横比がより1に近い場合についても計測を行い,外挿により血管の縦横比が1のとき(血管が円筒形のとき)の弾性率の真値を推定することを目指す. そのため,動脈のファントムへの内圧負荷実験において,超音波プローブによる押し圧を変えて,得られる歪み,弾性率がどのように変化するかを考察し,対策を検討する。
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