研究課題/領域番号 |
17H02107
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
桝田 晃司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283420)
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研究分担者 |
丸山 一雄 帝京大学, 薬学部, 教授 (30130040)
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 准教授 (90384784)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小気泡 / CD8陽性Tリンパ球 / 音響放射力 / 多分岐型流路 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする細胞として、ウイルス等の細胞内病原体に対する免疫防御に重要な CD8陽性Tリンパ球を用いた。同細胞のサイズは10-20 ミクロンであり、抗原を認識し活性化されると、腫瘍細胞を殺傷する機能を有する。また同細胞に特異的に付着する抗 CD8 抗体を修飾した微小気泡を導入し、細胞表面に共有結合させ、凝集体を形成した。微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色した。 水槽中にはポリビニルアルコールにて成形された流路幅0.5~1.4 mmの範囲の多分岐型流路を設置し、凝集体を含んだ懸濁液を通過させた。水槽底面にトランスデューサを設置し、蛍光顕微鏡の視野内に焦点を形成するような実験系を構築した。ここで形成した単焦点音場中の凝集体の動態を画像処理により観測した。同様の計測を様々な中心周波数、最大音圧に対しても適用し、凝集体の挙動を解析した。比較実験として、抗 CD8 抗体を有しない微小気泡を懸濁した場合と、微小気泡を含まない条件でも行った。 幅1.4 mmの流路に対して右方向に10 mm/sの速度で通過する懸濁液に対し、周波数3 MHzで最大音圧400 kPa-ppの平面波を30 s照射した場合、凝集体は音響放射力に抗して壁面に付着する様子が観測された。音波を照射することによって、2.1 mm^2程度の捕捉面積を確認した。周波数に対する捕捉面積の変化について、3~7 MHzの範囲では低周波になるほど捕捉面積が向上した。また抗 CD8 抗体を有しない微小気泡では、捕捉面積が1/3程度に減少した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際に治療効果を有する細胞に付着する微小気泡の開発に成功し、かつ安全基準以下の音響放射力を用いて、細胞ー微小気泡凝集体の挙動を制御する音波の条件を導出することに成功した。また人工血管としての材料の選定も進んでおり、生体に近い環境での実験を行える状況が整いつつある。一方、トランスデューサとしてのフレキシブルアレイ自体の出力が十分ではないため、今後の展開に工夫が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
3次元空間内での画像取得用プローブと、複数のアレイとの連携を行うためのGUIソフトウェアを、Visual C++によって開発する。これまでの研究で培ってきた、画像取得用プローブとトランスデューサの両方に位置計測マーカを取り付け、個別にリアルタイムに位置計測する技術を応用して、画像情報から得られた3次元血管網構造を仮想空間に展開し、治療に必要な超音波音場の位置情報を特定すると共に、状況を観測可能なインターフェースを構築する。 一方、凝集体の誘導に必要な条件は高音圧では無く、音響エネルギーの谷間を形成する音圧分布の空間的な勾配が重要である。つまり音圧分布の極大点から放射状に発生する音響放射力を、凝集体が通過すべき3次元経路上に存在する血管分岐部に配置することが必要であり、この機能を本ソフトウェアに含める。ソフトウェアを開発する過程において、3次元的に複数の分岐を有する人工血管ファントムを作成し、血管網再構成と凝集体の誘導の両方の評価実験を並行して進める。将来的に2次元配列のフレキシブルアレイが実用化されることを想定し、必要な素子数を推定すると共に、より低いエネルギーで目的を達するための条件の導出に努め、アレイの体表面上配置の最適化に関する知見を蓄積する。
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