研究課題/領域番号 |
17H02109
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
和田森 直 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60303179)
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研究分担者 |
中川 匡弘 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (60155687)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 光音響分光法 / 内因性ガス / 内視鏡 |
研究実績の概要 |
最近、人が病気ごとに固有のニオイを発する性質を診断に役立てようとする試みが注目されている。ニオイの診断的価値を明確にするためには、試料の採取方法の改良と分析時間の短縮とが必要と指摘されている。そこで、研究初期より超微量ガス分析に対する超高感度性が提唱されている光音響分光法(Photoacoustic Spectroscopy; PAS)を応用して、内因性ガスが排出される部位付近で採取、分析するために、内視鏡の鉗子管路を挿通可能な寸法のPA式嗅覚センサを開発した。 PA現象は、試料に強度変調した単色光を照射すると、吸収された光エネルギーにより試料内部で変調周波数に同期した発熱が起こり、その周期的な発熱による熱波や弾性波が空気中に音波を発生させる現象である。そのPA信号を検出するセンサはPAセルと呼ばれ、音波であるPA信号を電気信号に変換するマイクロホンと、そのマイクロホンを保持し、効率よく集音するために形状を工夫した筐体から構成される。最近では先端部外径が9mm強の上部消化管用汎用内視鏡が主流になりつつあり、そのうち最小の鉗子口径2.8mmの製品が市販されている。PAセルの直径はこれと同径とし、これに収まるマイクロホンとして携帯電話などに用いられる微小電気機械システム技術に基づくマイクロホン(長さ3.00mm、幅1.90mm、高さ0.90mm)を使用した。発生するPA信号をマイクロホンの音響孔へ導く音響管の働きをする中空構造の型に配線を施したマイクロホンを収め、樹脂を充填して筐体を成形した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
半導体レーザを破損し、再入手、再調整に時間を要したため
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、数百、数千種類ともいわれる干渉ガス成分の影響を低減するために、3種の発振波長の半導体レーザ装置とそれらの光出力、変調、波長を調整する光源制御装置を開発した。また、最大4台のマスフローコントローラを制御できるマスフロー/圧力プログラマと2台のマスフローコントローラ、圧力計から構成される混合ガス制御装置に1台のマスフローコントローラを追加し、3種の混合ガスを自動生成、連続、自動測定できるように改良した。昨年度は、内因性ガスが排出される部位付近で採取、分析するために、内視鏡の鉗子管路を挿通可能な寸法でPA式嗅覚センサを開発した。 本年度の研究実施計画では、まずは、試作したPA式嗅覚センサの感度、周波数特性、SN比、最大音圧などを評価し、必要ならば改良を加える。つぎに、これらの機器を用いて、既知濃度で調整した混合ガスに対するPA式嗅覚センサの感度特性評価を行う。そして、未知濃度の混合ガスの各波長におけるPA信号の感度変化から干渉ガス成分の影響を推定し、対象ガスの濃度を算出する仕組みを実現する。具体的には、各波長、各変調周波数におけるPA信号の混合ガスに対する感度特性から、原因物質の構成とニオイを対応付けるパターン認識を行う。パターン認識には、学習に時間がかかるが、微妙なニオイの違いやドリフトや経時変化を含んだ複雑な判別境界を形成することができるニューラルネットワークを用いる。具体的には、生体の嗅覚系が、匂い分子を嗅細胞の受容体で受容し、脳の組織の嗅球で匂いのパターンとして識別がなされることから、局所的に敏感でかつ方向選択的な神経系の構造に基づいた畳み込みニューラルネットワークを採用する。なお、畳み込みニューラルネットワークによるニオイと原因物質の構成を対応付けるパターン認識については昨年度に実施予定であったが、半導体レーザの破損、その再調整のため本年度の実施となった。
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