研究課題/領域番号 |
17H02110
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木戸 尚治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (90314814)
|
研究分担者 |
岡田 宗正 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (70380003)
間普 真吾 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70434321)
金 亨燮 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (80295005)
平野 靖 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90324459)
岩野 信吾 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90335034)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | コンピュータ支援診断 / ディープランニング / 類似画像検索 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,多様な肺疾患を対象として多列検出器型CT(MDCT)装置から得られる高精細な三次元画像データを利用した従来手法と比較して精度が高くロバストなコンピュータ支援診断(Computer-aided Diagnosis: CAD)システムの開発をおこなうことである.このためには最近の人工知能研究で注目されているディープラーニング技術を用いてCADシステムの構築をおこなう.アルゴリズムの開発や評価のために,教師なし学習と半教師あり学習を用いた大規模な正解ラベル付きの画像症例データベースを整備する.さらに,実際の臨床現場での医師の容易な操作を想定してグラフィカル・ユーザインターフェースベースの肺疾患統合CADシステムを構築して臨床評価をおこない,アルゴリズム開発へフィードバックさせてシステムの性能向上をはかることを目的としている. 本研究においては,ディープラーニングを用いるために大規模な画像症例データベースとそれに対するラベル付け作業が必要である.画像症例の収集に関しては複数の大学からの症例の収集をおこない,またラベル付けに関しては複数の放射線科医によるラベル付け作業をおこなっているが,教師無し学習や半教師あり学習によるラベル付け作業の自動化にも取り組んでいる.アルゴリズムの開発として,画像分類に関してはConvolutional Neural Network(CNN)に加えてNeural Network Convolution(NNC)による評価をおこなった.さらに画像分類だけでなくConv-deconv net,Fully-convolutional network (FCN)やU-netを用いてびまん性肺疾患や肺結節の領域抽出をおこなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては,多様な肺疾患を含む大規模な高精細三次元CT画像症例が必要であるが,びまん性肺疾患に関しては,山口大学や大阪大学の大規模な症例を用いている.びまん性肺疾患画像を研究に用いるためには放射線科医によるラベル付け作業が必須であるが,それぞれ3人の放射線科医によるラベル付け作業をおこないデータベース化をおこなった.また肺結節に関しては名古屋大学の臨床症例を用いてデータベースを作成した.さらに肺結節に関しては米国のLIDCデータベースもデータとして追加した. 病変を含む肺領域をロバストに抽出する手法としては,平成29年度はFully-convolutional neural networkやU-netを用いたびまん性肺陰影の領域抽出をおこない,放射線科医とほぼ同等の結果を得た.また肺結節においては三次元のConv-Deconv netを用いて病変領域を従来の手法よりロバストに抽出することを可能とした. 機械学習においては一般に大量の正解ラベル付きの学習データが必要であり,医用画像の場合はこの作業を医師がおこなう必要がある.特にディープラーニングにおいては,数万の学習データが必要となる場合もあり大変な労力が必要となる.このために正解ラベルをつける作業の必要のない教師なし学習とよばれる手法が提案されている.教師なし学習は教師あり学習に比べてより多くの計算機資源が必要となるが,コンピュータが自ら診断基準を設けて診断するため,現在の教師あり学習による機械学習より一歩進んでいる. これらの手法を用いて大規模な正解ラベル付きの画像症例データベースを整備するために,高分解能CT(HRCT)画像のびまん性肺疾患陰影に対して,教師なし学習を用いて正常を含む6パターンに分類した.この結果72.8%とかなりよい結果が得られた.
|
今後の研究の推進方策 |
多様な病変を含む肺領域をロバストに抽出するための肺領域抽出アルゴリズムの開発をおこなう.現在ディープラーニングを用いた領域抽出手法がいくつか提案されているが,われわれはこれらの手法を三次元に拡張し,さらに確率アトラスや機械学習を用いた手法を開発する.結果は従来手法のグラフカット法などを用いた手法と比較して精度とロバスト性を評価する. このように抽出された大量の肺領域画像は多彩な病変が含まれ.これを放射線科医が正解ラベルをつける作業は非常な労力を伴う.われわれはこの作業負担を軽減し,様々な病変に対する正解ラベル画像を大量に作成する手法を提案する.その手法のひとつは教師無し学習と呼ばれる手法であり,コンピュータ自らが診断基準を定めて画像にラベル付けをすることが可能である.またこの手法の欠点を克服した半教師あり学習が提案されている.われわれはこのような教師なし学習と半教師あり学習を用いて大規模な正解ラベル付きの画像症例データベースを構築する. このようにして構築されたデータベースを用いて多様な肺疾患に対する支援診断を一元的に取り扱うために,われわれが既に着手している陰影パターン分類や類似画像検索を基盤としたコンピュータ支援診断技術にディープラーニングを適用する.これにより多様な肺疾患に対する診断精度をあげることができるだけではなく,医師が想定していなかった症例提示が可能になると期待される.また実際の臨床現場での医師の容易な操作を想定した肺疾患統合診断支援システムを構築して臨床評価をおこない,アルゴリズム開発へフィードバックさせて性能向上をはかる.
|