研究課題/領域番号 |
17H02123
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山田 崇史 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50583176)
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研究分担者 |
今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ICU 関連筋力低下 / 神経筋電気刺激 / 筋原線維機能 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムと,それに対する神経筋電気刺激(NMES),関節他動運動(PM)およびそれらの併用効果について検討することである.平成29年度は,ステロイド・脱神経(S-D)ラットにおいて,酸化還元動態に着目し,筋力低下及びNMES 作用の分子メカニズムについて検討した.9週齢のWistar系雄性ラットを対照群及びS-D群に分け,それらの左後肢をNMES側,右後肢を非NMES側とした.S-Dラットは,両側の坐骨神経を切断するとともに,デキサメタゾン(5 mg/kg/day)を毎日7日間投与した.また,NMESは,麻酔下において,足関節底屈筋群に表面電極を貼付し,最大上刺激の強度(45 V)で50 Hzの強縮刺激を,2 s on/4 s offのサイクルで5回4セット毎日負荷した.最終NMESトレーニングの24時間後に,腓腹筋を採取し生理学的・生化学的分析に供した.S-Dラットの腓腹筋から採取したスキンドファイバーにおいて,Ca2+誘引性最大張力の著しい低下が認められた.また,この変化は,ミオシンの選択的な減少とネブリンの酸化的修飾を伴っていた.さらに,S-Dラットの腓腹筋では,NADPHオキシダーゼ(NOX)2/gp91phox,NOX4,神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS),内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の増加が認められた.一方,興味深いことに,NMESトレーニングは,nNOSおよびeNOSの増加以外の,S-Dラットにおける前述したすべての変化を防止した.これらの結果から,NMESトレーニングは,筋原線維タンパク質の退行性変化を防止することで,SDラットにおける筋原線維機能の低下を防止することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,S-Dラットととも,盲腸結紮穿孔(CLP)ラットを対象に実験を行う予定であったが,我々の予想に反して,CLPラットでは,横隔膜における著しい筋力低下が観察されたものの,後肢骨格筋では筋機能が保たれていた.したがって,研究対象をS-Dラットに絞り実験を行った.これらを除き,平成29年度に実施する予定であった実験は着実に遂行することができ,さらに,その結果は,我々の仮説を支持するものであったことから,現在までの達成度として,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,平成30年度には,神経筋電気刺激(NMES)に関節他動運動(PM)を併用した際の効果を検討し,臨床応用を見据えた最適NMES刺激条件を明らかにしたい.
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