研究課題/領域番号 |
17H02123
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山田 崇史 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50583176)
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研究分担者 |
今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ICU 関連筋力低下 / 神経-筋電気刺激 / 筋原線維機能 / 膜興奮性 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムと,それに対する神経筋電気刺激(NMES),関節他動運動(PM)およびそれらの併用効果について検討することである.平成30年度は,脱神経(DEN)とデキサメタゾン(DEX)投与が,ラット腓腹筋内側頭(MG)の筋重量および収縮機能に及ぼす影響を比較検討した.実験にはWistar系雄性ラットを用い,それらを対照(CNT)群,DEN群,DEX(5 mg/kg/day)群に分けた.なお,処置期間は7日間とした.DEN群とDEX群では,MGの筋重量がほぼ同程度低下した(DEN群:-24%,DEX群:-17%),一方,最大等尺性足関節底屈トルクは,DENがDEXに比べ著しく低下した(DEN群:-74%,DEX群:-10%).この結果と一致して,MGから採取したスキンドファイバーにおける最大Ca2+誘引性張力(Fmax)は,DEN群がDEX群よりも著明に低下した(DEN群:-50%,DEX群:-16%).DENとDEXはいずれも筋萎縮を引き起こすが,特に脱神経によって著しい筋原線維の機能低下が生じることが明らかとなった.したがって,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムに,メカニカルストレスの欠如が重要な役割を果たすことが示唆された.これらの結果を受け我々は,メカニカルストレスとして,NMES(45 V,50 Hz,2 s on/4 s off,5x4セット毎日負荷)の効果を検証したところ,NMESはDENに伴うMG スキンドファイバーのFmaxの低下を防止するがin situにおける足関節底屈トルクを完全に防止しないことが明らかとなった.これらの知見から,NMESトレーニングは,ICU関連筋力低下に伴う筋原線維機能の低下に拮抗して作用するが,細胞膜の興奮性の低下を抑制しないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の予想通り,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムにメカニカルサイレンシングが重要な役割を果たすことを示すとともに,メカニカルストレスとして,神経筋電気刺激(NMES)を負荷することで,筋力低下が効果的に軽減されることを明らかにした.一方,NMESは,ICU 関連筋力低下に伴う筋細胞膜の興奮性の低下を防止しないことも示された.なお,当初我々は,NMESに関節他動運動(PM)を併用した際の実験を実施する予定であったが,平成29年度の実験のみでは,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムおよびそれに対するNMESの効果を十分に明らかにすることができなかったため,平成30年度にはそれらの解明を優先して実施した.これらを除き,平成30年度に実施する予定であった実験は着実に遂行することができ,さらに,その結果は,おおむね我々の仮説を支持するものであったことから,現在までの達成度として,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,平成31年度には,モデル動物における神経筋電気刺激(NMES)および関節他動運動(PM)の効果と作用機序の解明を目指すとともに,健常者およびICU患者に対するNMESおよびPMの効果を検証したい.
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