ICU関連筋力低下に対する関節他動運動を併用した神経―筋電気刺激療法の基盤創出

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H02123
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 山田 崇史 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50583176)
• 研究分担者: 今井 富裕 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40231162)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: ICU 関連筋力低下 / 神経－筋電気刺激 / 筋原線維機能 / 興奮性

研究実績の概要

本研究の全体構想は，ICU 関連筋力低下の病態メカニズムと，それに対する神経筋電気刺激（ES），関節他動運動（PM）およびそれらの併用効果について検討することである．令和元年度は，当初の予定通りモデル動物（脱神経筋）におけるESとPMの併用（ES-PM）の効果を検討した．しかしながら，ES-PMでは，筋に対して強い負荷を加えられる反面，負荷後の回復に長い時間を要することから，等尺性収縮を用いたES（ISO-ES）のように，実験動物に対し毎日運動を負荷することができず，予想に反して効果が認められなかった．そこで，ICU 関連筋力低下で認められる電気刺激に対する反応性の低下の改善に焦点をあて，先行研究を参考に以下の3つの条件で，脱神経筋に対しISO-ESトレーニングを7日間を負荷した．１．強度：25 V，パルス幅：40 ms，頻度：20 Hz，収縮回数：200回，負荷頻度：2回/日，２．強度：25 V，パルス幅：40 ms，頻度：20 Hz，収縮回数：50回，負荷頻度：7回/日，３．強度：45 V，パルス幅：10 ms，頻度：50 Hz，収縮回数：50回，負荷頻度：7回/日．しかしながら，これらのいずれの条件においても，脱神経に伴う電気刺激に対する反応性の低下の改善は期待通り認められなかった．そこで我々は，これまでの動物実験の結果に基づき，電気刺激に対する反応性の低下が顕著に生じない，出来うる限り早期（ICU入室48時間以内）から，出来るだけ高強度のESを負荷することに重点を置き，本学臨床研究倫理審査委員会の承認を受け，本学附属病院ICUにおいて自主臨床研究を開始した（承認日：令和元年9月12日，承認番号：312-115）．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々の予想に反して，神経筋電気刺激（ES）と関節他動運動（PM）の併用は，ICU 関連筋力低下のモデル動物において，等尺性収縮（ISO）でのES（ISO-ES）に比べ，効果的に筋力低下を防止しないことが明らかとなった．しかしながら，平成29-30年度に行った研究により，ISO-ESにより，ICU 関連筋力低下が一部防止できることが示されたことから，予定通り，本学附属病院ICUにおいてISO-ESを用いた自主臨床研究をスタートさせた．また，その過程において，本研究の肝である，ヒト膝伸展筋への電気刺激中に発揮される，膝伸展トルクのモニタリングに関し，健常成人を対象に，アルケア社のロコモスキャンを用いた簡便な測定システムを開発し，再現性のあるデータが得られるに至っている．したがって，令和元年度に実施する予定であった実験は着実に遂行することができたことから，現在までの達成度として，おおむね順調に進展していると判断した．

今後の研究の推進方策

当初の予定通り，令和2年度には，本学附属病院ICUにおいて，ICU患者に対するESの効果を引き続き検証したい．現在の所，プラセボ群，ES負荷群とも，若干名のデータが得られているが，新型コロナウィルスの感染拡大防止策の影響もあり，患者を対象とした実験を中断せざるを得ないでいる．

研究成果

• [国際共同研究] Karolinska institute(スウェーデン)
  • 国名: スウェーデン
  • 外国機関名: Karolinska institute
• [雑誌論文] BGP‐15: A potential therapeutic agent for critical illness myopathy (2020)
  • 著者名/発表者名: Yamada Takashi
  • 雑誌名: Acta Physiologica 巻: 229 ページ: e13441
  • DOI: 10.1111/apha.13441
  • 査読あり
• [雑誌論文] Ingestion of soy protein isolate attenuates eccentric contraction-induced force depression and muscle proteolysis via inhibition of calpain-1 activation in rat fast-twitch skeletal muscle (2019)
  • 著者名/発表者名: Kanzaki Keita、Watanabe Daiki、Aibara Chihiro、Kawakami Yuki、Yamada Takashi、Takahashi Yoshitaka、Wada Masanobu
  • 雑誌名: Nutrition 巻: 58 ページ: 23～29
  • DOI: doi: 10.1016/j.nut.2018.06.025
  • 査読あり
• [雑誌論文] Neuromuscular electrical stimulation increases serum brain-derived neurotrophic factor in human (2019)
  • 著者名/発表者名: Kimura T, Kaneko F, Iwamoto E, Saitoh S, Yamada T
  • 雑誌名: Exp. Brain Res. 巻: 237 ページ: 47-56
  • DOI: 10.1007/s00221-018-5396-y
  • 査読あり
• [雑誌論文] Oxidative hotspots on actin promote skeletal muscle weakness in rheumatoid arthritis (2019)
  • 著者名/発表者名: Steinz MM, Persson M, Aresh B, Olsson K, Cheng AJ, Ahlstrand E, Lilja M, Lundberg TR, Rullman E, Angeby Moller K, Sandor K, Ajeganova S, Yamada T, Beard N, Karlsson BC, Tavi P, Kenne E, Svensson CI, Rassier DE, Karlsson R, Friedman R, Gustafon T, Lanner JT
  • 雑誌名: JCI Insight 巻: 4 ページ: e126347
  • DOI: 10.1172/jci.insight.126347
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Eccentric training enhances the αB-crystallin binding to the myofibrils and prevents skeletal muscle weakness in adjuvant-induced arthritis rat (2019)
  • 著者名/発表者名: Himori Koichi、Tatebayashi Daisuke、Ashida Yuki、Yamada Takashi
  • 雑誌名: Journal of Applied Physiology 巻: 127 ページ: 71～80
  • DOI: 10.1152/japplphysiol.00102.2019
  • 査読あり
• [雑誌論文] A Mechanism for Statin-Induced Susceptibility to Myopathy (2019)
  • 著者名/発表者名: Lotteau Sabine、Ivarsson Niklas、Yang Zhaokang、Restagno Damien、Colyer John、Hopkins Philip、Weightman Andrew、Himori Koichi、Yamada Takashi、Bruton Joseph、Steele Derek、Westerblad H?kan、Calaghan Sarah
  • 雑誌名: JACC: Basic to Translational Science 巻: 4 ページ: 509～523
  • DOI: 10.1016/j.jacbts.2019.03.012
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Myofibrillar function differs markedly between denervated and dexamethasone-treated rat skeletal muscles: Role of mechanical load (2019)
  • 著者名/発表者名: Yamada Takashi、Ashida Yuki、Tatebayashi Daisuke、Himori Koichi
  • 雑誌名: PLOS ONE 巻: 14 ページ: e0223551
  • DOI: doi.org/10.1371/journal.pone.0223551
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 神経筋電気刺激療法とグルタミン投与の併用がcolon 26がんモデルマウスにおける筋萎縮に及ぼす影響 (2019)
  • 著者名/発表者名: 舘林大介，檜森弘一，芦田雪，山田崇史
  • 雑誌名: 日本基礎理学療法学雑誌 巻: 22 ページ: 39-47
  • DOI: doi.org/10.24780/jptf.22.1_39
  • 査読あり
• [学会発表] 多発性筋炎に対する高強度伸張性収縮トレーニングの安全性と有効性の検討 (2019)
  • 著者名/発表者名: 檜森弘一，芦田雪，舘林大介，齋藤悠城，千見寺貴子，山田崇史
  • 学会等名: 第24回日本基礎理学療法学会学術大会
• [学会発表] メカニカルストレスによる筋原線維機能の制御機構 (2019)
  • 著者名/発表者名: 芦田雪，舘林大介，玉井勝是，阿部真佐美，檜森弘一，山田崇史
  • 学会等名: 第24回日本基礎理学療法学会学術大会
• [学会発表] ストレッチは脱神経後早期に生じる電気刺激誘引性筋力の低下を抑制する (2019)
  • 著者名/発表者名: 阿部真佐美，芦田雪，玉井勝是，檜森弘一，山田崇史
  • 学会等名: 第24回日本基礎理学療法学会学術大会
• [学会発表] 神経筋電気刺激による筋肥大効果は負荷強度に依存する (2019)
  • 著者名/発表者名: 山田崇史，芦田雪，檜森弘一，玉井勝是，阿部真佐美
  • 学会等名: 第27回日本物理療法学会学術大会
• [学会発表] 関節炎ラット骨格筋に対する伸張性収縮トレーニングの抗炎症-酸化作用 (2019)
  • 著者名/発表者名: 檜森弘一，舘林大介，芦田雪，山田崇史
  • 学会等名: 第74回日本体力医学会大会
• [学会発表] がん悪液質に伴う筋萎縮に対する脱神経処置の影響 (2019)
  • 著者名/発表者名: 芦田雪，舘林大介，檜森弘一，玉井勝是，阿部真佐美，山田崇史
  • 学会等名: 第74回日本体力医学会大会
• [学会発表] High-intensity eccentric training improves skeletal muscle dysfunction in a mouse model of polymyositis (2019)
  • 著者名/発表者名: Himori K, Ashida Y, Tatebayashi D, Saito Y, Chikenji T, Yamada T
  • 学会等名: 48th European Muscle Conference
  • 国際学会
• [学会発表] Myofibrillar function differs markedly between denervated and dexamethasone-treated rat skeletal muscles (2019)
  • 著者名/発表者名: Ashida Y, Himori K, Tatebayashi D, Yamada T
  • 学会等名: 48th European Muscle Conference
  • 国際学会
• [学会発表] 反復性の持続的ストレッチは脱神経に伴う筋力低下を軽減する (2019)
  • 著者名/発表者名: 山田崇史
  • 学会等名: 第27回日本運動生理学会大会
• [学会発表] DMD-nullマウスにおける伸張性収縮に対する感受性の特性 (2019)
  • 著者名/発表者名: 檜森弘一，芦田雪，阿部真佐美，竹中菜々，櫻井英俊，山田崇史
  • 学会等名: 日本筋学会第5回学術集会
• [学会発表] 筋原線維の機能におけるメカニカルストレスの役割 (2019)
  • 著者名/発表者名: 芦田雪，舘林大介，檜森弘一，山田崇史
  • 学会等名: 日本筋学会第5回学術集会
• [学会発表] 重症疾患ミオパチーの病態メカニズム (2019)
  • 著者名/発表者名: 山田崇史
  • 学会等名: 第49回日本臨床神経生理学会学術大会
  • 招待講演
• [学会発表] アンドロゲンによる骨格筋制御機構メカニズム (2019)
  • 著者名/発表者名: 今井祐記，榊原伊織，山田崇史
  • 学会等名: 第74回日本体力医学会大会
  • 招待講演