本研究の全体構想は,ICU 関連筋力低下の病態メカニズムと,それに対する神経筋電気刺激(ES),関節他動運動(PM)およびそれらの併用効果について検討することである.令和元年度には,これまでの動物実験の結果に基づき,電気刺激に対する反応性の低下が顕著に生じない,出来うる限り早期(ICU入室48時間以内)から,出来るだけ高強度のESを負荷することに焦点を置き,本学臨床研究倫理審査委員会の承認を受け,本学附属病院ICUにおいて自主臨床研究を開始した(承認日:令和元年9月12日,承認番号:312-115).令和2年度には,ICU患者に対するESの効果を引き続き検証した.新型コロナウィルスの感染拡大防止策の影響により,ICU患者を対象とした実験を中断せざるを得ない期間が生じたため,当初予定していたよりも対象者の確保が困難であったが,プラセボ群(n=3),ES負荷群(n=5)に介入を行った.結果,我々の予想に反し,初回の電気刺激誘発性トルク(ES-T)は,すべての対象者において著しく低下していた.また,プラセボ群では,全対象者において,ICU退室時のES-Tが入室時に比べ低下した.一方,ES負荷群では,5名中3名において,ICU退室時のES-Tが維持されていた.これらの知見から,未だ十分な個体数が得られていないが,ICU関連筋力低下は,ICU入室48時間以内の早期に発症すること,また,ESは,ICU滞在による筋力の更なる低下を防止する可能性があることが示唆された.
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