研究課題
本課題において我々はヒト短母指屈筋を対象とした新たな伸張性収縮モデルの確立を掲げている。今年度はヒト短母指屈筋による新規伸張性収縮損傷モデルの詳細な解析を試みた。対象は12名の男子大学生として60deg/secにて100回の伸張性収縮を短母指屈筋に課した。ヒト短母指屈筋は我々が独自に開発したトレーニングモデルを用いた。伸張性収縮直後、1日後、2日後、5日後に有意な随意最大筋力の低下が観察された。伸張性収縮直後に可動域の有意な低下が観察された。さらに伸張性収縮1、2日後に有意な筋痛の上昇が観察された。これらの結果は従来伸張性収縮損傷モデルにおいて用いられている上腕二頭筋における損傷モデルと同様の傾向であり、新規ヒト短母指屈筋モデルにおいても伸張性収縮による筋損傷の誘発に成功していることを示している。さらには伸張性収縮直後、1,2,5日後に短母指屈筋の支配神経である正中神経の伝導速度低下が観察された。この結果は動物実験においてみられる伸張性収縮後の運動神経伝導速度の低下と同様であり、動物実験での成果をヒトにおいて初めて再現できた重要な発見である。この時、骨格筋放電であるM波の振幅は伸張性収縮による影響を受けなかったことから、神経軸索自体は損傷をうけず、主にミエリン鞘が損傷している可能性が示唆された。この結果に関しても我々が動物実験において得られた結果と同様であった。以上から今回我々が確立したヒト短母指屈筋による新規伸張性収縮損傷モデルは新たな損傷モデルとして骨格筋神経両組織の相互作用を解析するうえで有用なモデルであることが示唆された。これらヒトでの成果に加えて、動物実験においてArnoldらの方法を用いた運動単位数推定法を確立することに成功した。この方法はヒトへの応用も可能であり、今回確立したヒト短母指屈筋伸張性収縮損傷モデルでも有効性が期待できる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
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