研究課題/領域番号 |
17H02125
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
山本 智章 新潟医療福祉大学, その他部局等, ロコモティブ症候群予防研究センター副センター長 (30445902)
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研究分担者 |
大西 秀明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (90339953)
田巻 弘之 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 教授 (40253926)
桐本 光 広島大学, 医歯薬保健学研究科(保), 教授 (40406260)
與谷 謙吾 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 講師 (10581142)
石道 峰典 大阪工業大学, 工学部, 講師 (80737536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨 / カプサイシン / 除神経 |
研究実績の概要 |
神経系の働きは骨代謝にも影響し、メカニカルストレス等の力学的因子やホルモン等の液性因子とともに重要な因子である。感覚神経や交感神経等の存在が骨組織内で確認されていることから、各種神経の骨組織に対する影響をしらべるため、若齢期の実験動物(ラット)を用いて坐骨神経のdenervationを実施した。次に、感覚神経の薬理的denervationのために神経遮断薬のカプサイシンを投与し、Ad神経線維やC神経線維の骨組織に対する影響を検討した。4週間の処方終了後に脛骨を採取して三次元マイクロCT撮影を実施して、骨梁微細構造の分析を行った。また骨破断試験装置を用いて脛骨3点支持により脛骨骨幹部の破断試験を実施し、骨破断強度、stiffnessを測定した。Denervation処置を行った群の脛骨海綿骨の骨量(trabecular bone volume :BV/TV)は無処置群と比較して有意に低下し、骨梁数、骨梁幅、骨梁連結密度等の骨梁微細構造のパラメータも有意に低下した。次に、感覚神経遮断薬を投与した群では、age-matched control群と比較して、bone surface/bone volume ratio(BS/BV)等の各構造パラメータは有意に低値を示し、一方Structure model index (SMI)は有意に低下したが、処方開始時点のbasal control群とはこれらは差はなかった。また破断強度やstiffnessは低下傾向にあったが有意な影響はなかった。 これらのことから、Ad、C神経線維の選択的遮断により成長期の骨量増加が妨げられ、骨梁構造も疎になる方向に作用し、骨吸収が促進されたことによる骨梁構造のロッド状化が示され、総じて感覚神経は海綿骨の骨量や骨梁構造維持にポジティブに機能している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、骨組織に対する末梢神経の役割のうち、薬理的に遮断できるAd線維やC線維などの感覚神経の影響に関する結果を得ることができた。日常、骨への荷重がある状況においても海綿骨の骨量やその構造維持に感覚神経がさらにポジティブに機能している可能性が示唆された。これまでに計画された研究課題は円滑に遂行されており、骨組織の構造や機能の側面から分析・評価をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は神経因子の骨組織に対する影響について高齢期を対象に調べる計画である。denervationや阻害剤を用いて筋骨格系の構造的・機能的影響について、これまで実施した若齢期のモデルと比較して影響の現れ方の違いを検討する。構造的分析評価には、三次元マイクロCT撮影装置を用いて骨構造を立体的に可視化して、海綿骨および皮質骨の構造解析を行う。また骨組織の顕微鏡観察により骨内支配神経の遮断と骨組織の骨細胞数や分布変化について関連性を調べ、骨内神経の骨細胞分布、骨量維持効果との関連性について検討する。また機能的分析評価には、骨破断強度試験を行い最大骨強度や破断点強度、elastic modulus、stiffness等を調べて機械的特性を明らかにする計画である。
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