研究課題/領域番号 |
17H02127
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(併任研究所), 障害者健康増進・運動医科学支援センター長 (00392192)
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研究分担者 |
長尾 元史 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (00359671)
鶴田 文憲 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30571450)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 運動学習 / 部分免荷歩行 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
中枢神経障害によって生じる四肢の痙縮症状は脊髄前角の下位運動ニューロンの過剰な興奮性によって生じ、脊髄損傷をはじめ様々な疾患で機能回復の妨げとなる。現状において痙縮症状に対する集中的リハビリテーションは神経回路の運動学習効果を介して効果を発揮することが知られているが、訓練終了後にその効果の持続を得ることは難しい。本研究は運動学習がニューロンの変化だけでなく、周囲のグリア細胞からの影響を受けながら形成されるという視点に立ち、痙縮に対する運動訓練の効果定着のメカニズムを分子レベルで明らかにし、ラット脊髄損傷後の痙縮に対し薬剤介入によって訓練効果の定着を誘導することを研究期間内に試みる。こうした基礎知見によって痙縮に対して分子レベルの治療法開発を進めることが本研究の目的である。 本研究期間の目標は以下の項目とする。①脊髄損傷ラットによる痙縮モデルにおいてリハビリ介入におけるニューロン・グリア相互作用にかかわる分子を網羅的に解析する。②培養実験を用いて①で得られた候補分子によるニューロンの機能制御作用をスクリーニングし、ニューロンの過剰な興奮性を抑制する液性因子を同定する。③最終的に脊髄損傷ラットの痙縮モデルにおいてリハビリ介入で痙縮を軽減させた状態で、標的分子に対して介入実験を行い、リハビリ中断後も痙縮の改善効果が得られるかを検証する。 本研究はニューロン・グリア細胞間で働く液性因子に着目することで、訓練効果定着の分子メカニズムを明らかするだけでなく、定着を促進する新たな創薬開発への可能性を生むものである。これは分子標的介入によるリハビリ効果の最大化という、新たなフィールドをリハビリテーション医学にもたらすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿ってラット脊髄損傷モデルにおける痙縮評価の実験系を作成した。水中の遊泳を用いた痙縮評価では安定した評価が可能であることを確認した。また、訓練として実施するトレッドミル上の歩行訓練の実験系も設定を行い、実施可能な状態となった。今後の生化学的解析のため、グリア細胞を個別にソートして解析するための条件設定を行い、生後間もない個体ではアストロサイトをセルソーターで分離する条件を設定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に設定した脊髄損傷に対する歩行訓練モデルを用いて、実際に訓練を実施するとともに痙縮がどのように変化するかを行動学的また組織学的に評価を行う。その際に生じる変化を生化学的に評価するためにセルソーターを用いたグリア細胞種別の解析方法の条件検討を進め、実際に動物個体からサンプルを得ることを試みる。 網羅的解析と並行して、訓練前後の動物の組織サンプルを解析し、神経機能制御のかかわる既知の分子の変化について分析を行う。
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