研究課題/領域番号 |
17H02140
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研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
河村 顕治 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (40278974)
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研究分担者 |
加納 良男 吉備国際大学, 保健福祉研究所, 教授 (70116200)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気刺激 / 周期的身体揺動刺激 / 経頭蓋直流電気刺激 / 認知機能 / ニューロリハビリテーショ ン / サルコペニア / 近赤外線脳血流測定 / 3次元動作解析 |
研究実績の概要 |
立位姿勢制御においては多重感覚情報変化を統合するために一定の注意配分や認知機能が必要である。立位姿勢制御運動として電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動を行わせたときに、二重課題実施の有無による近赤外線脳血流測定装置(NIRS)を用いた大脳皮質活動の解析を行ったところ、二重課題実施時に有意にオキシヘモグロビン濃度が増加した。すなわち大脳皮質活動が活性化した。すなわち電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動時に0から9までの数字を1秒間隔で、できるだけ不規則に考える「random number generation task」を同時に行うと脳が活性化すると言える。電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動は下肢の筋力を増強すると同時にバランス能力も改善することがこれまでの研究で明らかにされているので、二重課題を実施しながらの電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動は身体機能面だけでなく注意能力の向上も期待できることが明らかとなった。 しかし、認知機能に問題のある高齢者が実施する運動としては二重課題を実施しながらの電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動は難易度が高い。そこで、直接大脳皮質を電気刺激するtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動時に同時に行う研究を実施した。健常被験者を対象として、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時の前額部の大脳皮質の活動を携帯型近赤外線脳血流測定装置(DynaSense・PocketNIRS HM)を用いて解析した。その結果、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動単独よりもtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時に有意にオキシヘモグロビン濃度が増加した。この研究結果より、二重課題実施時と同様に、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時には身体機能面だけでなく注意能力の向上も期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに健常被験者を対象とした実験を行ってきたが、前額部の大脳皮質の活動を携帯型近赤外線脳血流測定装置(DynaSense・PocketNIRS HM)を用いて解析した結果、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動時に0から9までの数字を1秒間隔で、できるだけ不規則に考える「random number generation task」を同時に行った時と同様に、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時にはオキシヘモグロビン濃度が増加した。すなわち、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時には下肢筋力やバランス能力などの身体機能面だけでなく注意能力の向上も期待できることが明らかとなった。 さらに動作解析においては2枚の小型低容量フォースプレート(テック技販・TF-3020)を導入して左右の足の床反力を個別に計測できるようにしたことにより、荷重立位周期的揺動装置による揺動運動時の逆動力学解析ができるようになり、筋骨格モデル動作解析ソフトウェア(nMotion musculous)にて筋張力シミュレーション解析が行えた。これまでは電気刺激併用時の荷重立位周期的揺動運動の下肢筋活動は推定不能であったが、筋張力シミュレーション解析を行うことによって推定が可能となった。これにより、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動と一般的なスクワット運動の比較などができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで実験室において健常被験者を対象とした実験を行ってきたが、電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)を同時に行った時には下肢筋力やバランス能力などの身体機能面だけでなく注意能力の向上も期待できることが明らかとなった。そこで、最終年度としての令和元年度は、デイケアセンターを利用している高齢者において電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCS(経頭蓋直流電気刺激)がどのような効果をもたらすか検討することとした。実験室の研究においてtDCS(経頭蓋直流電気刺激)はDC-STIMULATOR PLUS(neuroConn)を用いて刺激を行った。この装置は本体にケーブルで接続した電極を頭蓋に固定するため取り回しが煩雑であった。そこで、高齢者でも容易に経頭蓋直流電気刺激が行えるように、Halosport 2(ニューロイノベーション)を新たに導入する。Halosport 2はヘッドフォンシステムで装着が容易であり、安全性と有用性については米国において主にスポーツ選手が利用して証明されている。研究は観察研究とし、デイケアセンター利用の高齢者の意思を最大限に尊重し、自由に電気刺激併用型荷重立位周期的揺動運動とtDCSによる運動に参加してもらい、1ヶ月ごとに下肢筋力やバランス能力、認知機能を検査する。これらの検査はデイケアセンターにおいて定期的に行っている検査であり、特別な介入は行わない。認知機能の検査は高齢者がストレスなく実施できるようにタブレット形式で認知機能の評価の行える日本光電物忘れ相談プログラムを実施する。
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