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2019 年度 実績報告書

ゴールデンエイジの脳の運動機能発達の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H02143
研究機関国立研究開発法人情報通信研究機構

研究代表者

内藤 栄一  国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究マネージャー (10283293)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード運動野 / 体部位再現 / 活動抑制 / 機能分化 / クロスモダル抑制
研究実績の概要

本研究は、これまで明らかにされてこなかった、人の生存にとって必要不可欠である脳の運動機能の発達をMRIを用いて調査することを目的としている。2019年度は、手の運動機能に着目し、機能的MRIを用いて、運動野の体部位再現という機能分化を支える体部位間抑制や運動野の活動部位の限局化に関わる発達過程を調査した。
右手運動中の脳活動を成人20名で計測すると、運動中には運動野の左手領域、足領域および顔領域の活動が抑制されていることがわかった。このような体部位間抑制は小学生20名でも傾向はみられたが、小学生から中学生にかけて顕著に発達することがわかった。この事実は、右手運動中に他の体部位が不随意に動くことを避けたり、他の体部位再現部からの余計な干渉を避けるための体部位再現間の機能分化と解釈できた。また、右手指運動に関わる左運動野の活動は発達とともに限局化し、小学生―中学生―成人へと手の運動経験が累積するに伴い、運動野のシナプス結合が強化される可能性を示した。さらに、成人では運動中に視覚野などの無関係な感覚領野の抑制がみられたが、このようなクロスモダル抑制も小学生では未成熟で、成長とともに成熟することを明らかにした。成人では視覚野を抑制できている運動試行ほど精度の高い運動が可能であったことから、このクロスモダル抑制の発達も、他の感覚を遮断して運動に集中することを可能にする機能分化の一つと考えられた。これらの最新の知見を、Developmental Neurobiology79(6): 536-558. doi: 10.1002/dneu.22701, 2019で報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していた通り、これまでに、大脳ー小脳連関に関しては、機能的MRIや拡散強調MRIを用いて、局所的結合から遠隔領域間結合への発達という発達の原理を明らかにし、その成果をBrain Structure and Function 224(3): 1359-1375. DOI 10.1007/s00429-018-01821-5, 2019で公表した。また、運動野の体部位間抑制の発達や活動の限局化に関する成果も、Developmental Neurobiology 79(6): 536-558. doi: 10.1002/dneu.22701, 2019で公表した。加えて、運動制御に必須の自己身体認知に関わる右半球前頭ー頭頂ネットワークの発達に関してもCerebral Cortex 28: 1532-1548, 2018などで公表してきた。

今後の研究の推進方策

これまで公表してきた大脳-小脳連関の機能的および解剖学的結合の上昇や運動中の同側運動野などでみられる機能抑制機構の発達に関する知見に基づき、2020年度はこれらの知見をさらに進める予定である。大脳-小脳連関に関しては、これまでに明らかにしつつある、小脳内の感覚運動機能モジュールの発達に関する知見をまとめ、この成果を公表する予定である。また、運動中の同側運動野でみられる抑制に関しては、この機能的役割を明らかにする。特に、同側運動野の抑制が発達する小学生から中学生にかけて、この抑制が他の体部位再現部からの余計な干渉を避け、右手運動の正確性や巧緻性と関係することを明らかにし、この成果を公表する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Right-hemispheric dominance in self-body recognition is altered in left-handed individuals2020

    • 著者名/発表者名
      Morita T, Asada M, Naito E
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 425 ページ: 68-89

    • DOI

      doi: 10.1016/j.neuroscience.2019.10.056

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Neurological and behavioral features of locomotor imagery in the blind2020

    • 著者名/発表者名
      Amemiya K, Morita T, Hirose S, Ikegami T, Hirashima M, Naito E
    • 雑誌名

      Brain Imaging and Behavior

      巻: - ページ: -

    • DOI

      DOI: 10.1007/s11682-020-00275-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Developmental changes in task-induced brain deactivation in humans revealed by a motor task2019

    • 著者名/発表者名
      Morita T, Asada M, Naito E
    • 雑誌名

      Developmental Neurobiology

      巻: 79 ページ: 536-558

    • DOI

      doi: 10.1002/dneu.22701

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Lifespan change in asymmetry of superior longitudinal2019

    • 著者名/発表者名
      Kaoru Amemiya , Eiichi Naito , Hiromasa Takemura
    • 学会等名
      OHBM2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Local-to-distant development of cerebrocerebellar sensorimotor network in human brain2019

    • 著者名/発表者名
      Eiichi Naito, Kaoru Amemiya, Tomoyo Morita, Daisuke N. Saito, Midori Ban, Koji Shimada, Yuko Okamoto, Hirotaka Kosaka, Hidehiko Okazawa, Minoru Asada
    • 学会等名
      OHBM2019
    • 国際学会
  • [学会発表] 身体運動が創発する脳の発達、特殊化と機能改善2019

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      第27回脳の世紀シンポジウム 運動/スポーツと脳
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳を知り、脳を活かす -脳内身体表現の理解と応用-2019

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      情報通信研究機構研究講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳内身体表現と運動制御のシステム2019

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      第37回日本感覚統合学会姫路大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 一流サッカー選手とブラインドサッカー選手の脳から考える神経系の適応と超適応2019

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      日本学術会議公開シンポジウム「スポーツと脳科学」
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳を知り、脳を活かす -脳内身体表現の理解と応用-2019

    • 著者名/発表者名
      内藤栄一
    • 学会等名
      九州ICTセミナー2019
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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