本研究では、運動野内の機能分化や大脳-小脳間のネットワーク化に着目し、発達に伴って運動領野ネットワークがどのように成熟していくのかを脳の機能と構造の側面から包括的に明らかにすることを目的としている。これまでに、発達に伴う大脳-小脳連関の機能的および解剖学的結合の上昇や運動中の同側運動野などでみられる機能抑制機構の発達に関する知見を公表してきた。2020年度には、これらの理解をさらに深化させる知見を得た。運動野の機能分化に関しては、右手運動中の同側運動野の抑制(半球間抑制)が発達している子供ほど、右手の巧緻性が高いことを明らかにした。これは、脳が対側運動野からの経路を主要化し、同側運動野からの干渉を抑えるように発達することを示唆した。この成果は、Cerebral Cortex Communicationsに報告した。また、大脳-小脳連関に関しては、成人の小脳虫部に手の受動運動時には活動しなく、能動運動時のみに活動する領域を発見した。この領域は小学生では見られなく、中学生、成人になるにつれて出現することを突き止めた。この部位は脊髄からの入力を受けることが知られており、動物実験で運動のinternal feedbackを脊髄の運動細胞から受け取る部位と対応していたため、ヒトにおいて運動のinternal feedbackを脊髄の運動細胞から受け取る部位と想定された。この成果に関しては、現在論文を作成している。
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