研究課題/領域番号 |
17H02152
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 裕二 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (30191456)
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研究分担者 |
木島 章文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10389083)
横山 慶子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 講師 (30722102)
奥村 基生 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90400663)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対人技能ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本年度は,対人技能ダイナミクス解明のための実験系の構築を主とした.具体的には,透過型スクリーンにバイオロジカルモーション刺激を呈示することと,呈示刺激に追従する際,あるいは実際の他者の動きに対する身体の動きを,モーションキャプチャで身体全体のキネマティクスを,小型床反力計測装置で下肢のキネティクスを,さらに無線筋電計で筋出力を同時計測できる実験系を,MATLABのPsychotool boxを用いて構築した.こうした実験系を利用した実験計画を検討し,予備実験をいくつか行った結果,スクリーンへ呈示されたバイオロジカルモーション刺激を追従する場合には,全身反応時間よりも明らかに速い追従動作の開始と下肢の加重が見られた.このことは限られた光点の動きからでも次の動きが予測できることを示唆していると考えられた.したがって,どのような情報に基づいてこうした予測が成り立つのかを検討することができる.また,二者の動作(野球における投手のけん制動作と走者の離塁・帰塁動作)を筋電計で計測した予備実験では,キネマティクスでは観察されないわずかな他者(投手)の下肢の筋出力に対応して自ら(走者)の動作方向の判断と動作を開始していることが観察された.このことは,他者の筋出力という視覚情報による観察によって得ることができないと思われる情報を「気配」として感じている可能性を示唆する.平成30年度は,さらにこうした点について詳細に検討を加える予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
対人技能ダイナミクス解明のための実験系の構築が順調に進み,スクリーンに呈示した刺激に対する反応動作,あるいは実際の他者の動きに対する反応動作を,キネマティクス,キネティクス,筋出力という異なるレベルで計測することができた.これらの実験系によって,バイオロジカルモーションのように実際の情報を縮約した状況から,実際の動き(ビデオや実体)までさまざまな刺激を用いて対人技能ダイナミクスの解明が可能となる.二者間の駆け引きや他者の「気配」を感じる仕組みの解明への実験的アプローチが可能となる.
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今後の研究の推進方策 |
この実験系を用いて,基礎的な左右の動きへの追従動作,剣道における二者の駆け引き,投手-打者間の駆け引きなどに見られる他者の動きの「気配」を感じ,それに対する素早い判断を行い,実際に動きを遂行する過程を実験的に解明していくことになる.どういった情報に基づいて「気配」を感じるのかを,刺激呈示による情報操作によるアプローチと,実際の場面での二者の同時計測による情報探索アプローチの両面から明らかにしていく.
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