令和元年度は、低酸素環境で行うペダリングによる有酸素性運動に対する糖代謝や筋代謝の応答を検討した。なお、平成29-30年度はランニングを用いて同様の検討を行っていることから、筋収縮様式の相違(ランニングでは伸張性筋収縮、ペダリングでは短縮性筋収縮)の影響を検討できると考えられる。研究1では、男性12名を対象に、通常酸素環境または低酸素環境(酸素濃度14.5%)において60分間のペダリング運動(強度は最大酸素摂取量の60%)を負荷した。その結果、低酸素条件は通常酸素条件に比較して、運動時のペダル負荷および動脈血酸素飽和度がいずれも低値を示した。また、血中酸素分圧および二酸化炭素分圧は低酸素条件が低値を示した。これに対して、血中グルコース濃度および呼吸交換比は低酸素条件がいずれも高値を示したことから、低酸素条件では通常酸素条件に比較して、糖代謝が亢進したものと考えられた。 次に研究2では、男性10名を対象に、最大酸素摂取量の65%に相当する強度での30分間のペダリング運動を、通常酸素環境または低酸素環境(酸素濃度14.5%)で負荷した。その結果、低酸素条件は通常酸素条件に比較して、運動中の動脈血酸素飽和度は低値を、心拍数は高値を示した。運動直後における血中乳酸濃度は、低酸素条件が通常酸素条件に比較して高値を示した。また、運動に伴い大腿部での筋血流量はいずれの条件においても増加し、条件間での差はみられなかった。さらに、筋酸素消費率は運動に伴い増加したが、運動直後における値は低酸素条件が通常酸素条件に比較して高値を示した。以上の結果から、低酸素環境で行うペダリング運動(短縮性筋収縮が主要となる運動様式)では通常酸素環境で行う運動と比較して糖代謝が亢進すること、また、活動筋における酸素消費は亢進することが明らかになった。
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