研究課題/領域番号 |
17H02158
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 筋細胞 / ミトコンドリア / ミオグロビン / 相互作用 / 運動 |
研究実績の概要 |
前年度までの実験成果を踏まえて、ミトコンドリアに内在するミオグビンタンパク質の量的変化について再度検証した。用いたモデルは持久性トレーニングを行った後の骨格筋(腓腹筋)を用いた。骨格筋全体でのミトコンドリアタンパク質は+80~+130%程度増加したが(タンパク質によって増加割合が幾分異なる)、ミオグロビンは+50%増加した。さらにPK処理した単離ミトコンドリアにてミオグオビンを検出したところ、トレーニングを行っていないコントロール筋と同程度であった。持久性トレーニングによるミトコンドリアとミオグロビンの増加割合を鑑みると、ミトコンドリアへミオグロビンが能動的に輸送された可能性も推察された。そこで培養筋芽細胞(C2C12)を用いてミトコンドリア内のミオグロビンを検出するモデルを構築しようとし、C2C12細胞を用いて単離ミトコンドリアのミオグロビン検出を試みた。しかしながら、元々の発現量が少ないC2C12ではミオグロビンの検出感度が良好ではなく、遺伝子導入によるミオグロビン過剰発現細胞での検証の必要性に至った(次年度の課題)。 ミトコンドリアの発現因子の探索では、C2C12細胞を用いて試験した。ロイシンがC2C12細胞のミトコンドリア生合成を上方調節し、その背後でmicroRNA(数種)の発現がロイシンによって抑制されていた。PGC1αやTFAMなどミトコンドリア生合成の代表的なシグナル動態もロイシン濃度やmicroRNA発現量と対応する挙動であった。microRNAの発現を上昇/抑制した細胞モデルにおいてミトコンドリア生合成との関連性を検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定としていた運動トレーニング動物(ラット)を用いた再検証を行った。結果は仮説とはやや異なる傾向であったが、ミトコンドリアとミオグロビンの増加割合が異なったにも関わらずミトコンドリアに内在するミオグオビン量が変化しなかったことは非常に興味深い。つまり、もしミオグロビンが受動的にミトコンドリアへ取り込まれるのならば、増加割合で2倍程度大きな変化をするミトコンドリアに対して輸送されるミオグロビンは減少するはずだと推察される。この点を次年度以降、別の実験モデル(細胞モデル)を用いて検証しなければならないだろう。また、栄養基質(ロイシン)添加時にミトコンドリア生合成を抑制制御しているmicroRNAの候補も確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋ミトコンドリアに内在するミオグロビンの輸送機序を明らかにする実験をいくつか実施する。ミトコンドリアへのタンパク質輸送は、外膜と内膜に存在するトランスロカーゼ(TOMとTIM)によって制御されているとされており、ミオグロビンはトランスロカーゼを介してミトコンドリア内へ輸送されている可能性がある。そこでC2C12細胞を用いて、ミオグロビン過剰発現細胞を構築し、その細胞のミトコンドリア内のミオグロビンの所在をProtection Assayによって解析する。加えて、TOMやVDACからの輸送を薬理的に亢進/抑制した際のミオグロビンの輸送量変化を検証しようと考えている。また、ミトコンドリア生合成に対するmicroRNA干渉の機序については、今年度候補に挙がったmicroRNAの発現上昇/抑制したC2C12細胞を用いて、ロイシン由来のmicroRNAの関与の分子機序の手がかり明らかにしようと考えている。なお、結果の一部は学術誌への投稿する予定である。
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