研究課題/領域番号 |
17H02159
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
眞鍋 康子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)
|
研究分担者 |
出口 真次 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30379713)
古市 泰郎 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
松井 翼 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (50638707)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 張力 / 初代培養細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、培養骨格筋細胞または単一筋線維をシリコン製の基板上で培養し、収縮させた際に基板表面に生じるシワの数や深さを定量することで、筋細胞の張力を測定する系を構築することを目的としている。2017年度は様々な硬さの基板(架橋剤:母材の混合比率を1:1.0~1:2.0まで0.1ずつ変化させる)を作製し、骨格筋初代培養細胞(長趾伸筋由来またはヒラメ筋由来)が基板上で増殖・分化できる最適な条件を検討した。その結果、1:1.4の比率がもっとも細胞が接着し分化が良いことが明らかになった。さらにこの基板の硬さで、表面プラズマ処理時間を45、60,90秒の3つの時間で検証した。その結果、60秒の処理時間がもっとも細胞の状態が良いことが明らかになった。上記で決定した条件で基板上に細胞を播種し分化させた後に、電気刺激を与えたところ、収縮に応じてシワが発生したことから、シワを解析するための基礎条件を設定することができた。 また初代培養細胞と同時に、短趾屈筋(flexor digitorum brevis-以下FDB)から筋線維を摘出し、細胞で使用した硬さの基板に接着させた。FDB線維の接着が初代培養細胞より弱かったため、接着因子としてラミニン、poly-D-Lysin、アミノシランカップリング処理などを組み合わせることにより、筋線維を基板に接着させることができた。しかし、FDBが基板に接着しても、電気刺激で収縮させた時に、基板上にシワが発生しなかった。今後は、筋線維用の基板の硬さ、筋線維を収縮する電気刺激の条件を初代培養細胞の条件とは別に設定する必要があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、骨格筋初代培養細胞が接着・増殖し分化できるシリコンの硬さを検討した。 シリコンの硬さは架橋剤:母材の混合比率で決まる。そこでその比率を1:1.0~1:2.0まで0.1ずつ混合比率を変化させたシリコン基板を作製し、表面プラズマ処理時間は60秒に固定して、骨格筋初代培養細胞(長趾伸筋由来またはヒラメ筋由来)が基板上で増殖・分化できる最適な条件を検討した。その結果、1:1.3または1:1.4の比率が細胞の分化が良いことが明らかになった。次に、表面プラズマ処理時間の検証を行った。2種類の基板の硬さのシリコンに、45、60 または90秒の表面プラズマ処理を行った基板で細胞を培養した。その結果、1:1.4の比率の混合比率に60秒のプラズマ処理をする条件がもっとも細胞の分化状態が良いことが明らかになった。またこの条件で、細胞に電気刺激をあたえ収縮させると、収縮に応じてシリコン上にシワが観察されたことから、細胞の張力を測定できる条件が設定できたと考えられる。また、細胞の接着性を向上させるために硫酸と過酸化水素の混合液(ピラニア水)で基板を洗浄することにより、細胞の接着性が増加したことから、上記条件に加え、基板をピラニア水処理する条件も加えた。 以上の今年度の結果から、当初の予定通り、基板上で分化させた筋細胞を収縮させたときにシワを発生させる条件が設定できたため、おおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
H30年度は、H29年度までに決定したシリコン基板をもちいて、骨格筋細胞を収縮させたときの画像を取得し、アルゴリズムの開発を行う。アルゴリズムは、Image-J fijiを利用する予定である。手法は、取得した画像を各コマにわけ、弛緩時の細胞と収縮時の画像から、シワの輝度変化(白黒)を利用して、シワのみを抽出し、抽出されたシワの本数、長さ、形状などのパラメータを決め自動算出する予定である。また、上記のアルゴリズムを用いて測定した結果の妥当性を、筋萎縮の細胞モデルを用いて検証する。用いる萎縮骨格筋の細胞モデルは、長期培養細胞モデル、ガンカヘキシアモデル、デキサメタゾン処理モデルである。これらの萎縮骨格筋細胞を基板上で生育させ、電気刺激を与え、収縮時のシワの画像を取得する。上記の方法で作製したアルゴリズムを用いて解析したときに、正常なコントロール細胞にくらべて有意に張力が低下していたら、本研究で構築した系が妥当であると判断できる。他の生化学的要素(細胞径やミオシン重鎖の発現量)で萎縮モデルではコントロールに比べ明らか低下が観察されるのに、シワの解析では張力低下が観察されなかった場合は、アルゴリズムの修正を検討する。筋線維に関しては、H29年度までに基板に接着させることが可能となったが、収縮によるシワが観察できていないため、シリコンの硬さを検討し、筋線維の張力が測定できる系の確立を行う。
|