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2019 年度 実績報告書

骨格筋細胞の張力測定系の構築と筋萎縮をもたらす分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H02159
研究機関首都大学東京

研究代表者

眞鍋 康子  首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)

研究分担者 出口 真次  大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30379713)
古市 泰郎  首都大学東京, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
松井 翼  大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (50638707)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード骨格筋 / 張力
研究実績の概要

本研究では、培養骨格筋細胞または単一筋線維をシリコーン製の基板上で培養し、収縮させた際に基板表面に生じるシワの数や深さを定量することで、筋細胞の張力を測定する系を構築することを目的としている。これまでにシリコーン製基板上で細胞を培養し収縮させるための基礎条件を設定し、それを定量するためのアルゴリズムの作製、ならびにそれを評価するためのモデル細胞での検証を行った。
2019年度は、収縮によってシリコーン製基板上にできるシワがどの程度の細胞の力を反映しているかについて、ガラスニードルを用いた評価実験を行った。分化した骨格筋細胞を固定したのち、ガラスニードル(先端とたわみの関連性が既知)を細胞の側面から刺し、水平方向へ移動させることで細胞に力を加えシワを生じさせ、その時のニードルのたわみと、基盤上のシワの長さを計測した。細胞に加えた力の大きさは、ニードルのバネ定数(nN /um)とたわんだ長さ(um)の積によって算出した。基板上にできたシワの長さと力の関係をプロットしたところ、直線性の関係性が得られた。これにより1筋管細胞当たり約3 uNの力を発揮していることも明らかになった。
さらに、これまで2ウェルチャンバーを用いて測定していた系を、24ウェルプレートで測定できる系にし、スループット性を改善した。24ウェルプレートの各ウェルの底面に穴を開け、円形のカバーガラスで作製したシリコーン基板をはめ込んだ。さらに自動撮影システムのために、骨格筋細胞を収縮させる電気刺激装置、基板に生じたシワを動画撮影するカメラ、および顕微鏡の電動ステージを統合した系を構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は、シワと力の関係性を数値的に評価した。本研究で作製した筋細胞の張力を評価する系では、筋肥大細胞モデルで生じるシワが増加し、筋萎縮モデルで生じるシワが減少する事が明らかになっており、収縮によって生じるシワの長さや本数と筋細胞が収縮する力には相関関係があると考えられた。そこで、2019年度はシワの長さと力の関係をガラスニードルを用いてより詳細に測定した。ガラスニードルは事前にたわみ(距離)と力を測定したものを用いた(465 nN /um)。シリコーン基板上に播種し分化させた筋細胞を固定した後、ガラスニードルを用いて基板上にシワができる程度の力を付加し、シワとガラスニードルの状態の画像を取得した。また、ガラスニードルを細胞からはなして、力が付加されていない状態のガラスニードルと細胞の状態の画像も取得した。ガラスニードルのたわみ距離から負荷した力を算出し、力とシワの関係をプロットすることで、力とシワの関係のグラフを得た。その結果、与えた力と生じるシワはほぼ直線の関係にあり、本研究で構築したシワから、細胞が発揮している力をある程度推定できることが明らかとなった。さらに、画面上の標準的な太さの筋管にできたシワから1本の筋管あたり約3 uNの力が発揮されていることが明らかとなった。
続いて、本測定系のスループット性を持たせるため24ウェルプレートの系を立ち上げた。骨格筋細胞を収縮させる電気刺激装置、基板に生じたシワを動画撮影するカメラ、および顕微鏡の電動ステージを統合したシステムを開発した。また、1ウェルあたり1Hz, 10秒間の電気刺激とカメラの動画撮影が同時に行われるプログラムを作成した。これらにより、24ウェルすべての筋細胞の収縮およびシワを約30分で撮影できるようになった。

今後の研究の推進方策

2020年度は、本系を使用して、筋萎縮を阻害する薬剤の評価を行う。候補となる薬剤は、筋萎縮を制御している重要な転写因子であるフォークヘッド型転写因子Forkhead box-containing protein, O1(FOXO1)の阻害剤である。この薬剤は、C2C12細胞で筋萎縮を予防する作用が報告されている。そこで、この薬剤投与がデキサメタゾンやガンカヘキシアによって誘導した筋細胞の萎縮を予防する効果があるかについて本研究で立ち上げたシワの系でForce indexを測定することで検証する。
さらに、収縮力に影響を与える分子メカニズムとして骨格筋における非筋ミオシンの1つであるNon-muscle myosin IIc(NMIIc)の役割について検証する。骨格筋型ミオシンは収縮力に直接影響を与えるものとして、これまで多くの研究で注目されてきたが、非筋型ミオシンの骨格筋における役割は明らかではない。NMIIa, IIbは筋芽細胞の増殖や遊走などに重要であり、筋の分化とともに発現量が低下してくるが、NMIIcは分化した骨格筋細胞で特徴的に発現している。これまでNMIIc骨格筋における役割は明らかになっていないものの、我々の予備検証から老化や廃用性萎縮モデルマウスの骨格筋で発現量が増加していることが示されており、筋線維化や筋張力との関係も示唆される。そこで、様々なモデル系におけるNMIIcの発現動態を明らかにしたのちに、本研究で立ち上げた筋張力測定技術を用いてNMIIcが筋張力に与える影響を検証する。そのために、ゲノム編集技術をもちいてNMIIcを欠損させた細胞を作製する。また、NMIIcを過剰発現させた細胞を作製する。これらの細胞をシリコーン製基板上で分化させて、細胞の筋張力を測定し、NMIIcが筋の発揮張力に影響を及ぼすかを検証する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] R3hdml regulates satellite cell proliferation and differentiation2019

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto K, Furuichi Y, Yamamoto M, Takahashi M, Akimoto Y, Ishikawa T, Shimizu T, Fujimoto M, Takada-Watanabe A, Hayashi A, Mita Y, Manabe Y, Fujii NL, Ishibashi R, Maezawa Y, Betsholtz C, Yokote K, Takemoto M.,
    • 雑誌名

      EMBO Rep

      巻: 20 ページ: e47957

    • DOI

      10.15252/embr.201947957

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A new in vitro muscle contraction model and its application for analysis of mTORC1 signaling in combination with contraction and beta-hydroxy-beta-methylbutyrate administration.2019

    • 著者名/発表者名
      Sato S, Nomura M, Yamana I, Uchiyama A, Furuichi Y, Manabe Y, Fujii N
    • 雑誌名

      Biosci Biotechnol Biochem

      巻: 83 ページ: 1851-1857

    • DOI

      10.1080/09168451.2019.1625261

    • 査読あり
  • [学会発表] 骨格筋細胞の収縮力測定系の開発と薬剤探索への応用(シンポジウム)2020

    • 著者名/発表者名
      眞鍋康子
    • 学会等名
      第93回日本薬理学会
  • [学会発表] Molecular mechanism of physical activity-induced beneficial effects2019

    • 著者名/発表者名
      眞鍋康子
    • 学会等名
      First Japan China Korea Research Meeting on Physical Activity and Exercise Science
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Single-cell information analysis reveals small intracellular and large intercellular variations increase cellular information capacity2019

    • 著者名/発表者名
      Takumi Wada, Mitsutaka Wataya, Masashi Fujii, Ken-ichi Hironaka, Miki Eto, Shinsuke Uda, Daisuke Hoshino, Katsuyuki Kunida, Haruki Inoue, Hiroyuki Kubota Hiroki, Hamaguchi, Yasuro Furuichi , Yasuko Manabe, Nobuharu L. Fujii, Shinya Kuroda
    • 学会等名
      The 20th International Conference on System Biology (ICSB2019I)
    • 国際学会
  • [学会発表] 培養骨格筋細胞の発揮張力を評価する測定手法の確立とスループットシステムの開発2019

    • 著者名/発表者名
      眞鍋康子、濱口裕貴、松井翼、出口真次、古市泰郎、藤井宣晴
    • 学会等名
      第7回若手による骨格筋細胞研究会
  • [学会発表] 培養骨格筋細胞の発揮張力を評価する測定手法の確立2019

    • 著者名/発表者名
      濱口 裕貴, 松井 翼, 出口 真次, 古市 泰郎, 藤井 宣晴, 眞鍋 康子
    • 学会等名
      第71回日本細胞生物学会
  • [学会発表] 骨格筋細胞の発張力を評価する新たな系の開発2019

    • 著者名/発表者名
      眞鍋 康子,濱口 裕貴, 松井 翼, 出口 真次, 古市 泰郎, 藤井 宣晴
    • 学会等名
      第8回TOBIRA研究交流フォーラム
  • [学会発表] 骨格筋細胞の収縮力を評価する新技術2019

    • 著者名/発表者名
      眞鍋康子、濱口裕貴、松井翼、出口真次、古市泰郎、藤井宣晴
    • 学会等名
      第73回日本栄養食糧学会

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公開日: 2021-01-27  

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