研究課題/領域番号 |
17H02172
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
崔 翼龍 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, ユニットリーダー (60312229)
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研究分担者 |
鈴木 治和 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (80333293)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 恒常性 / 慢性疲労 / 体温調節 / 睡眠調節機構 |
研究実績の概要 |
これまでにさまざまな神経・内分泌・免疫機能の異常が報告されている“水浸疲労モデル”をもとに、“疲労負荷ー疲労回復”のサイクルを短時間で繰り返すし、生体内の恒常性維持機構の機能を撹乱することで、疲労回復を遅延させた慢性疲労モデルの確立に成功している。本モデルでは、休息期における睡眠時間が疲労負荷初期には徐々に増加するが、3日目を前後に低下しはじめ、9-11日頃から再び上昇し始めるユニークな変化を示す。また、生体の体温調節と深く関わっている尻尾の発熱回数も負荷開始7-9日まで徐々に上昇し、その後下降に転じることを明らかにしている。そこで今年度は、これらの睡眠・体温調節機構の機能変化や自律神経機能変化を手係りに慢性疲労に陥る臨界期の同定に取り組んだ。埋め込み式チップを体内に埋め込み、自由行動下の体温変化を測定した検討では、水浸負荷により、平均体温が約2度上昇し、負荷後9日頃までは高い体温を維持するが、そのご徐々に低下していくこと、負荷初期には尻尾発熱時の体温が非発熱時の体温より高いが、負荷4日ごろから発熱時の体温が非発熱時より低くなることを見出した。尻尾の発熱が負荷7-9日では低下し始めること、睡眠時間が負荷ご9-11日ごろから再び上昇し始めることなどを考え合わせると負荷9日ごろを境に非可逆的な慢性疲労に陥る可能性を示唆している。また、自律神経機能の変化を連続的に評価可能なテレメトリーシステムのセットアップにも取り組んでおり、今後体温・睡眠調節に加え自律神経機能の変化も合わせて評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は疲労負荷を伴う行動学変化や体温・睡眠調節機能の変化などを手係りに慢性疲労に陥る臨界期の同定に取り組んでおり、概ね負荷後9-10日が境に当たることを示唆する結果を獲得した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は疲労負荷を伴う行動学変化や体温・睡眠調節機能、自律神経機能の変化を検討した結果、負荷9日前後を境に、生体の恒常性維持機構が異常な変化を示すことを明らかにした。そこで今年度は疲労負荷9日を境に、血液や関連組織を採取し、次世代シーケンサーを用いて遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析する。また、関連臓器の組織学的な変化や血中ホルモンやサイトカインなどの経時的な変化も合わせて検討し、行動学指標や体温・睡眠や自律神経機能変化との関連を検討する。
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