研究課題
これまでに、徐々に生体内の恒常性維持機構の機能異常を誘導し、日常の疲労蓄積から徐々に慢性化していくユニークな慢性疲労モデルを用いて、疲労の慢性化に伴って睡眠・体温調整機構が徐々に変調していくこと、ストレス関連のホルモン調整機能が異常を示すことなどを明らかにしてきた。特に体温調節の適応反応と考えられる尻尾の散熱回数が徐々に増加し、ピークに脱する疲労負荷9日後には血中のACTHが一過性に低下すること、また疲労負荷後半にはコルチコステロンのネガティブフィードバック機能の低下に由来すると考える血中ACTHの上昇と相関して尻尾の散熱回数が低下することを突き止め、疲労負荷の慢性化を伴う生体のバイタル調節機能の動態変化は血中ホルモンの動態変化と密接に連動している可能性を明らかにした。本年度は、これらの疲労の慢性化を伴うより詳細な分子プロセスを検討する目的で、疲労負荷3日後、9日後、14日後の血中および関連臓器での遺伝子発現プロファイルの解析を行った。結果、疲労負荷初期にはクエン酸代謝回路などに関わる遺伝子群の発現が顕著であるが、疲労負荷の慢性化を伴ってこれらの代謝関連の遺伝子群の発現は低下し、疲労負荷後期にはヒトT細胞白血病ウイルス1型や関節リュウマチなどの感染や自己免疫疾患に関わる遺伝子群の発現が活発になることを明らかにした。これまでの疲労の慢性化を伴うバイタル調節機能の異常、生体の酸化ストレスや炎症性サイトカインの上昇が疲労負荷後期に現れることと考え合わせると、疲労の慢性化には神経・内分泌・免疫の多角的・多階層の恒常性維持機構の紊乱が関わっていることを示唆している。また、PETを用いた検討では、疲労の慢性化によって脳内のミクログリアの活性化やセロトニントランスポーターの結合能の低下が観察された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mol. Pharmaceutics
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Neuroscience Research
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Molecular Pain
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