研究課題/領域番号 |
17H02174
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10312852)
呉 世昶 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (10789639)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂肪性肝炎 / 肝線維化 / 炎症 / クッパー細胞 / エンドトキシン / 運動実践 |
研究実績の概要 |
多重平行ヒット仮説(Tilg H, et al. Hepatology 2010)より,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や進展には腸内細菌菌体成分のエンドトキシンが重要な役割を演じる.一方,生体のKupffer細胞(KCs)によるエンドトキシンの処理能力もNAFLD発症の重要な要因である.NAFLDの予防と治療には運動実践が有用であるが,その詳細な分子メカニズムは十分に解明されていない.本年度は,運動負荷がKCsの表現形質に与える影響を検討するために,エンドトキシンに対する生体クリアランスと炎症応答反応の観点より解析した. In vivo実験では,野生型マウス8週齢を安静群と中強度の運動群(週5回を3ヶ月間, 漸増負荷10-18 m/分, 50分/日)に分けた.運動負荷の最終日の翌日に エンドトキシン(0.01 microgram/g body weight)を尾静脈投与し,同部位から経時的に血漿エンドトキシン濃度と炎症性サイトカイン濃度(TNF-alphaとIL-6)を測定した. 研究結果としてIn vivo実験では,エンドトキシンの血中濃度-時間曲線下面積は,安静群に比して運動群では有意に減少した.Et投与1.5時間後のTNF- alpha,IL-6濃度は,運動群では安静群に比して低値を示した.運動負荷はEtに対する生体クリアランスの増大と炎症応答を低下させた.マクロファージの除去を施したマウスでは,運動負荷によるこれらの効果は消失した.KCsのbeads貪食能は運動群において増加した. 長期間の中強度運動の継続はKCsの貪食能向上によるエンドトキシンに対する生体クリアランスの増大と炎症応答反応の低下を誘導した.運動実践によるNAFLDの肝病態の改善には,KCsの形質変化が介在すると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスにおける中強度の運動負荷の継続は,Kupffer細胞貪食能を向上させることにより生体のエンドトキシンに対するクリアランスを増大させ,また,炎症応答の低下を誘導するという新しい研究成果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究成果に関して,エンドトキシン濃度の増加がないことにも関わらず,中強度の運動負荷がKCsの表現形質を変化させた因子についてはさらなる検討が必要である.異物貪食能に影響を与えることが報告されているステロイドホルモンの末梢血濃度について測定を行い,病態との関連性について検討する.
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