研究課題/領域番号 |
17H02174
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312852)
呉 世昶 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (10789639)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / エンドトキシン / Kupffer細胞 / 運動実践 / ステロイドホルモン |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や進展には腸内細菌菌体成分のエンドトキシンが重要な役割を演じる.一方,生体のKupffer細胞(KCs)によるエンドトキシンの処理能力もNAFLD発症の重要な要因である.NAFLDの予防と治療には運動実践が有用であるが,その詳細な分子メカニズムは十分に解明されていない.今年度は過食肥満マウス(p62KO)における運動負荷がKCsの異物貪食能とその表面マーカー,アディポカイン,ステロイドホルモンの産生・分泌に与える影響について検討した.30週齢の野生型マウス(WT)とp62KOマウスを用いた.p62KOマウスは安静群(p62KOrest)と運動群(p62KOexe)に分け3群で比較した.運動群には小動物用トレッドミルによる中強度走運動を週5回1ヶ月間, 10-18m/分, 50分/日負荷した.KCsのbeads貪食能と,貪食能活性マーカーであるCD68陽性細胞の割合は,WTに比してp62restにおいて低値を示したが,運動負荷により増大した.KCs表面におけるCD11b陽性細胞率はWTに比してp62KOrestで増加したが,p62KOexeでは抑制された.CD206陽性細胞率は群間で差を認めなかった.TLR4陽性細胞率はWTに比してp62KOrestにおいて増加し,p62KOexeにおいては低値を示した.Adiponectinはp62restとp62KOexeの両者で低値を示した.一方,DHEAはWTに比してp62restで低値を示したがp62KOexeで増加した.過食肥満マウスにおける中強度走運動の継続は減弱したKCs異物貪食能の回復と形質変化を誘導した.その背景にはDHEAの関与が示唆された.本結果は運動がNAFLDの病態改善に有用であることの分子メカニズムの一つであると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,野生型マウスに継続的走運動を負荷することでKCs貪食能が増大し,外因性毒素の除去能が増大することを見出した.今年度は過食肥満マウスにおける中強度走運動の継続が、減弱したKCs異物貪食能の回復と形質変化を誘導することを見出した.本結果は肥満者に罹患率の多いNAFLDの病態改善に運動が有用であることの分子メカニズムの一つであると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
ヒトメタボリック症候群に類似する過食肥満モデル“p62 遺伝子欠失マウス” (p62 KO) に60 %高脂肪食を摂餌させると重症の脂肪性肝炎を発症する.今年度は,新規脂肪性肝炎マウスに対して,継続的走運動による肝病変の改善効果についてより詳細に検討する予定である.雄性5週齢のp62 KOに60%高脂肪食を12週摂餌させ,同期間,マウス用トレッドミルにて週5回の走運動 (10 - 18 m/min の漸増負荷,計 50 min) を継続し (Ex群),非運動群 (Rest群)と比較する.経時的に体重および体組成を解析する.肝病変について,血液生化学,病理組織学 (SAF score),炎症・線維化関連分子の定量的PCRにて解析する.加えて門脈血,末梢血のLPS濃度を測定する予定である.
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