研究課題
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や進展には腸内細菌菌体成分のエンドトキシンが重要な役割を演じる.一方,生体のKupffer細胞(KCs)によるエンドトキシンの処理能力もNAFLD発症の重要な要因である.NAFLDの予防と治療には運動実践が有用であるが,その詳細な分子メカニズムは十分に解明されていない.昨年度は過食肥満マウス(p62KO)における運動負荷がKCsの異物貪食能を増大させることを見出した.今年度は,p62KOに3ヶ月の長期間にわたる運動負荷(中強度以下の継続的走運動)をおこない,KCs の異物貪食能の増大に関連すると考えられるNAFLDの肝病理組織と病態生理の改善について検討をおこなった.その結果,運動実践は1. 肝腫大を抑制した.2. 肝の炎症および線維化を改善した.3. 門脈血中LPSの上昇を抑制した.過食肥満マウスモデルにおいて,継続的走運動が門脈血中のLPSの代謝動態を変化させ,肝病態進展(線維化)を抑制することを初めて明らかにした.先行研究において,継続的走運動は腸内細菌叢を変化させること(Zhang C. et al., 2013, Kim D and Kang H., 2019)や,腸管透過性の亢進を抑制することが明らかになっている(Luo B. et al., 2014).継続的走運動は,腸内細菌叢を変容させることや腸管透過性を低下させることで,門脈血中LPSの上昇を軽減したと考えられる.本結果は運動がNAFLDの病態改善に有用であることの分子メカニズムの一つであると考えられた.
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すべて 2020 2019
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