研究課題
骨格筋は多くのエネルギーを消費する代謝臓器であり、運動能力を支持するとともに体脂肪量、血糖値を制御する重要な役割を果たす。また、生理活性物質マイオカインを分泌する分泌臓器としての役割を有し、全身の臓器を制御することがわかってきた。一方、腸内における細菌の働きや免疫制御機構が解明されはじめ、生体最前線においてバリア機能を果たす腸が、管腔内から血液中への物質透過を制御することで全身に影響を及ぼすことが明らかになってきた。本研究は、骨格筋における代謝・分泌機能と腸における細菌叢・バリア機能の相互作用について検討することを目的とする。複数のLeaky gutモデルマウスを作成し、腸バリア機能の低下が骨格筋のエネルギー代謝能に及ぼす影響について検討した。その結果、バリア機能の低下したマウスでは、血中インスリン濃度の上昇、骨格筋のインスリンシグナル伝達系の低下がみられ、インスリン感受性を減弱させることを観察した。バリア機能低下マウスでは、走運動時におけるグリコーゲン利用が促進され、運動時の筋代謝能を損なう可能性が示唆された。また、走運動トレーニングを負荷したマウス(ドナーマウス)から採取した便から腸内細菌叢のメタゲノム解析を行い、菌叢プロファイルの結果を得た。さらに、ドナーから得た便を投与したマウス(レシピエントマウス)の便の腸内細菌叢を測定し、複数の特徴的な細菌が便の移植により定着することを観察した。
2: おおむね順調に進展している
腸バリア機能の低下が骨格筋代謝を減弱させることを観察した。しかし、どのような機序を介しているのかについては不明であり、血液中の制御因子について検討する必要がある。また便移植試験では、ドナーマウスの腸内細菌叢がレシピエントマウスに伝播することを明らかにすることができた。今後、レシピエントマウスの代謝能にどのような影響を及ぼすか検討していく。
Leaky gutモデルマウスにおいて、腸バリア機能の低下が骨格筋代謝能を低下させるメカニズムについて明らかにする。また、骨格筋代謝能の減弱したマウスの腸バリア機能についても評価し、腸内環境に及ぼすマイオカインの効果についても検討していく。さらに、トレーニングを行ったドナーマウスの便を移植したレシピエントマウスの臓器重量、血中・骨格筋における代謝関連指標を測定し、安静ドナーマウスの便を移植したレシピエントマウスと比較する計画である。
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