研究課題/領域番号 |
17H02185
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
立川 愛 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 室長 (10396880)
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研究分担者 |
山本 浩之 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 室長 (80574615)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫老化 / HIV / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会を迎えつつある我が国にとって、健康に年を取ること、すなわち高齢者で問題となる疾患への罹患を最小限に抑えることが重要である。高齢者では様々な感染症へ罹患しやすくなったり、ワクチン応答性が低下するだけでなく、高齢者で問題となる疾患の多くは慢性炎症などの免疫学的制御の破綻との関連が強く疑われている。加齢とともに免疫システムの正常な機能が徐々に失われ、免疫老化と呼ばれる状態に至ることが明らかとなりつつあるが、その詳細は未だ解明されていない。本研究では獲得免疫応答の中心であるT細胞に焦点を絞り、免疫老化における機能低下・異常のメカニズムを明らかにすることを目的とする。免疫老化が病態の本質であるHIV感染症をモデルとして、病態の異なるHIV感染者(未治療で血中ウイルス量が高く病態進行の早い感染者(non-controller)群と血中ウイルス量の低い病態進行の遅い感染者(controller)群) の試料を用いて研究を開始した。末梢血中のT細胞は様々な分化段階にあるT細胞が混在しているため、昨年度までに各分化段階のT細胞を分取し、これまでの研究で特定の機能分子において違いの見られたCD4陽性T細胞早期エフェクターメモリー細胞について、網羅的メチローム解析を行った。本年度は、網羅的な解析で明らかにした群間でDNAメチル化頻度が有意に異なるメチル化部位について、解析試料数を増やし個々のメチル化部位について検証を進めたところ、転写に関連する複数の遺伝子近傍のメチル化部位で有意にメチル化状態が異なることが明らかとなった。DNAメチル化頻度と遺伝子発現量の関連を明らかにするため、少数の分画細胞を用いての近傍遺伝子の発現量定量システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、網羅的メチル化解析の実施・HIV感染での病態進行と関連するDNAメチル化部位の絞り込みを達成できた。また、DNAメチル化頻度と近傍遺伝子の発現量の関連解析においては、発現解析に使用できる臨床試料が限られているためその実施可能性に不安があったが、少数の分画細胞を用いて当該遺伝子の発現定量系を構築でき、次年度に発現解析を進めることが可能となった。概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに明らかにした、病態の異なるHIV感染者群間で有意差の見られたDNAメチル化部位の一部について、近傍遺伝子の発現量との関連について調べる。DNAメチル化と発現量の関連が見られた遺伝子について、その機能と他遺伝子発現への関連を明らかにする。対象とするメチル化部位近傍遺伝子は、転写調節に関連する遺伝子であったため、当該遺伝子の発現抑制を行い網羅的発現解析を行うことで、当該遺伝子の影響を受ける遺伝子群の抽出を試みる。 また、本年度は早期メモリー分画について解析を行ったが、これまでの研究でナイーブ分画の減少は免疫老化促進と強く関連することが明らかになっており、さらにナイーブ分画においても何らかの異常が生じている可能性を示唆するデータが蓄積しているため、来年度はナイーブT細胞についても、早期メモリー分画で違いの見られたDNAメチル化部位について、同様に解析を進める予定である。抗原刺激によるT細胞分化とT細胞老化の関連性については明らかとなっていないため、本解析によりT細胞分化と老化の関連性について知見を得る。 高齢者試料の収集について手続きを進め、上記で明らかにした免疫老化関連現象について、高齢者試料を用いての検討を進め、HIV感染による免疫機能低下と加齢による免疫機能低下の類似点・相違点について検討する。
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