研究課題
超高齢化社会を迎えつつある我が国にとって、健康に年をとること、すなわち高齢者で問題となる疾患への罹患を最小限に抑えることが重要である。高齢者で問題となる疾患の多くは慢性炎症などの免疫学的制御の破綻との関連が強く疑われている。加齢とともに免疫老化と呼ばれる状態に至ることが明らかとなりつつあるが、その詳細は未だ解明されていない。本研究では獲得免疫応答の中心であるT細胞に焦点を絞り、免疫老化における機能低下・異常のメカニズムを明らかにすることを目的とした。免疫老化が病態の本質であるHIV感染症をモデルとして病態の異なるHIV感染者試料(未治療で、免疫老化状態にある血中ウイルス量が高く病態進行の早い感染者(NC)群と、血中ウイルス量の低い病態進行の遅い感染者(C)群) )を用いて解析を実施した。先行研究でIL2遺伝子プロモーター領域において免疫老化と関連したDNAメチル化異常が見られたCD4陽性T細胞早期エフェクターメモリー細胞について、網羅的なメチローム解析を行ったところ、群間でメチル化頻度に有意差が見られたCpG部位(DMS)において、C群に比してNC群でメチル化状態の低いCpG部位が多く(脱メチル化の亢進)、NC群では遺伝子発現が亢進する傾向にあることが示唆された。さらにCpG island内で連続してDMSが確認された領域について個別にメチル化解析を行ったところ、Non-cotroller群で高度に脱メチル化されており、近傍遺伝子の発現とメチル化頻度が逆相関していることが明らかとなった。一方で、フローサイトメーターにより非特異刺激後に発現するT細胞表面分子を調べたところ、活性化により発現する分子の発現が、C群に比してNC群で有意に高かった。これらの結果から、免疫老化状態にあるT細胞においては遺伝子発現が亢進しており、活性化しやすい状態にあることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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