研究課題
本研究では、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)サブタイプに対する有毒二次代謝産物等の結合性を調べるハイスループットスクリーニング(HTS)系を樹立し、フグ毒テトロドトトキシン(TTX)誘導体からなるフォーカストライブラリー、クロイソカイメン由来フラクションライブラリーを基に、各種疾病治療の原石となるNavサブタイプ選択的阻害剤の探索を目的とする。平成29年度、既報を改変し、特定のNavサブタイプを一過性発現する293T細胞に対するベラトリジン(VER)の細胞毒性をTTXが抑制するか否かを調べ、HTS系の礎とする計画をたてたが、予想よりNavの発現量が少なく、目的とするTTXによる細胞の蘇生を評価できなかった。そこで別の既報に従い、Nav1.2を一過性発現させた293T細胞にNavのアゴニストであるVERを添加し、生じた細胞膜の脱分極作用を膜電位感受性蛍光色素の蛍光強度変化で捉える手法を展開した。しかし、既報を再現する結果は得られなかった。さらに、予め複数のNavサブタイプが発現するマウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いる軌道修正を測ってみたが、同様の結果であった。一方、連携研究者が化学合成したTTX類縁体に対するNav1.1-1.7の感受性を調べ、1)チリキトキシン(CHTX)がNav1.7に対して低結合性を示したこと、2)4,9-anhydroTTXが既報に反しNav1.6に対する高選択性を示さなかったこと、3)いずれのデオキシ体もいずれのNavサブタイプに対して低結合性を示したこと、を明らかにした。CHTXはTTXのC-11位にグリシンが結合した誘導体とみなせるが、C-11側鎖のアミノ基がドメイン3上のTTX結合部位に含まれるイソロイシン残基と反発し、逆に他のサブタイプで同領域に配列するアスパラギン酸残基と静電結合することが示唆された。
3: やや遅れている
電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)のアゴニストであるベラトリジン(VER)をNav発現細胞に添加すると細胞膜の脱分極が生じ、これを膜電位感受性蛍光色素の蛍光強度変化で捉える手法の開発が計画通りに進行しなかった。原因は、Navを一過性発現する293T細胞において蛍光色素で捉えうる顕著な脱分極作用が生じていなかったためと考えている。そこで、予め複数のNavサブタイプが発現するマウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いる軌道修正を測ったが、同様の結果であった。Navに対する有毒二次代謝産物等の結合をハイスループットでスクリーニングする観測系の樹立は極めて困難であることがわかった。
平成29年度、電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)に対する有毒二次代謝産物等の結合をハイスループットでスクリーニングする観測系の樹立は極めて困難であることがわかった。そこで、予め複数のNavサブタイプが発現するマウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いる電気生理実験にて、直接、有毒二次代謝産物等の結合を観測する計画に変更する。但し、平成30年度は連携研究者よりお預かりする合成TTX類縁体(フォーカストライブラリー)のNav結合性を調べ、Navの特定のサブタイプを特異的に認識する化合物を探索する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 356
10.1038/s41598-017-18651-w
Toxicon
巻: 137 ページ: 78-82
10.1016/j.toxicon.2017.07.016
Journal of Organic Chemistry
巻: 82 ページ: 9595-9618
10.1021/acs.joc.7b01658
British Journal of Pharmacology
巻: 174 ページ: 3811-3892
10.1111/bph.13985
https://researchmap.jp/read0140760/
http://www.agri.tohoku.ac.jp/bukka/index-j.html