研究課題
本研究においては、生体防御に関わる複合脂質について、その合成法の確立および関連化合物の合成を行うとともに、得られた化合物をリガンドとする受容体との分子間相互作用の詳細な解析および生物活性の評価を行っている。また、我々が最近見出した脂質認識疎水性部位における極性残基部位の結合安定性への寄与の解析と、相互作用を利用した脂質分子の設計、新規有用化合物の創製を目指している。特に、免疫調節に関わる脂質認識型の受容体、すなわちToll-like receptor(TLR)ファミリーの中で脂質認識型受容体であるTLR2あるいはTLR4、および、脂質抗原受容体リガンドを中心として研究を進めている。受容体タンパク質の脂質認識部位の解析とリガンド設計、および脂質部位のバリエーションに着目した種々の構造の合成を継続して行っており、前年度に確立した合成手法を用い、グリセロ型脂質およびセラミド型脂質については、糖鎖、イノシトール等のヘッドグループを含む化合物合成を行った。また、天然型構造を中心に、その他の複合脂質骨格を持つ種々の免疫調節性複合脂質についても、世界に先駆けた全合成を行っている。合成した化合物については、これまで合成例の無い天然型構造、あるいは構造活性相関に基づき設計した複合脂質構造の双方について、免疫調節活性について評価を行い、構造活性相関データを得た。構造活性相関の結果については、MD計算の結果とあわせて検討することにより詳細な分子認識の解析を行った。また、各々の自然免疫受容体について、細胞上および細胞内挙動の解析を進めており、前年度の実績に基づき、さらなる標識化合物合成に成功し、イメージング等の解析に展開した。合成化合物の利点を生かしたアプローチにより、複合脂質の生体防御における種々の役割解明を進めた。
2: おおむね順調に進展している
研究の進捗状況としては、当初計画に述べている種々の複合脂質合成法の確立と関連化合物の合成について順調に達成している。また、生体防御に関わる活性評価を含む機能解析についても順調に進んでおり、新たな新発見にも繋がった。
研究計画全体として順調に進行中であり、今後についても これまでに確立した合成手法を基盤とした効率的複合脂質合成法の開発をさらに進め、最初の全合成となる合成的な取り組みも含めた複合脂質合成を行う。また、これまでに得られた構造活性相関の結果および受容体による脂質認識に関わる知見に基づき、生体防御に関わる複合脂質の役割解析に関わる構造の設計と解析をさらに進める。また、構造活性相関の解析のために分子動力学計算(MD)法を含めた計算的手法による解析を行っているが、構造活性相関をよく説明できる結果も得られており、今後の構造設計と相互作用の理解のために、引き続き積極的に活用していく予定にしている。 以上の取り組みを基に標識化合物を用いた解析も進めることにより、種々の複合脂質についての、生体防御に関わる機能の解明を進める。
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