本研究課題では、遺伝子の変異やストレスなどにより変性した糖タンパク質のユビキチンープロテアソーム系による分解機構を明らかにするためのプローブとして、ユビキチンの付加位置や数、糖鎖の構造、タンパク質部分の立体構造の異なる数種類のユビキチン化糖タンパク質を合成することを目的としている。 昨年度は、ユビキチン二量体合成とユビキチン化糖鎖化IL-8合成のためのδ-セレノ-L-リシン残基を有するそれぞれのペプチドセグメントの合成を検討し、合成上の問題点を明らかとした。本年度はそれらの問題点の解決を目指した。ユビキチン化糖鎖化IL-8に関しては、δ-メルカプト-L-リシンを用いることで修飾リシン含有糖鎖化IL-8の合成を達成し、ユビキチンチオエステルとの連結反応を検討したが進行しなかった。一方、ユビキチン二量体合成に関しては、固相合成に用いる樹脂と切り出し条件を変更することで、δ-セレノ-L-リシン含有ペプチドセグメントの合成を達成し、δ-セレノ-L-リシン残基を介したユビチキンペプチドセグメントのチオエステルとの連結反応にも成功した。これにより、δ-セレノ-L-リシンを介したユビキチン化タンパク質プローブの合成法を確立することができた。これらの研究成果は、Journal of Organic Chemistry誌上で論文発表し、最新の成果については国際学会Pacifichem2021で発表した。
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