記憶・学習や感覚情報処理の際に活性化された神経細胞が蛍光蛋白質で標識されるArc-dVenusマウスを用いて、活性化される神経細胞がどのような法則性で選ばれるのか、その法則性を明らかにすることを目指した。 また、Arc-dVenusマウスとさまざまな脳・精神疾患モデルマウスを交配し、神経細胞の活性化パターンが正常なパターンとどのように違うか調べ、疾患の病態に関わる機能異常を明らかにすることを目指した。 令和元年度は、ヒゲからの触覚入力が海馬歯状回顆粒細胞の活性化パターンにどのような影響を与えるかを調べた。具体的には、(1)ヒゲ正常マウス:内側に縦縞模様のある容器に入れたArc-dVenusマウスと、(2)ヒゲ感覚遮断マウス:口の周りの左右のヒゲを根元でカット後、内側に縦縞模様のある容器に入れたArc-dVenusマウスで、海馬歯状回顆粒細胞の活性化パターンに違いがあるかどうかを調べた。その結果、(1)と(2)で大きな差は見出されなかった。本実験の条件では、ヒゲからの入力の、海馬歯状回顆粒細胞の活性化に対する寄与は小さいと考えられた。 また、食餌の条件と海馬歯状回顆粒細胞の活性化パターンの関係についても調べた。 さらに、共同研究により、自閉症や統合失調症と関係の深い3q29欠失症候群のモデルマウスで、大脳皮質聴覚野のdVenus陽性細胞が増加していることを報告した。さらに、自閉症様行動を示すPOGZ (Pogo transposable element derived with ZNF domain) 変異導入マウスで、anterior cingulate cortexのdVenus陽性細胞が増加していることを報告した。
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