研究課題
本研究では、行動課題と機能イメージング、及び電気生理を組み合わせたマルチモーダルなアプローチにより、視覚記憶の想起における前頭葉-側頭葉ネットワークの機能をマルチスケールに理解する。昨年度までに、非空間的視覚記憶課題を遂行中の2頭のマカクザルを用いて15O-H2O PETによる全脳の機能マッピングを行い、記憶関連活動を示す部位として下側頭皮質と共に得られた眼窩前頭皮質の活動部位に抑制性DREADDを遺伝子導入した。またDREADDアゴニストの投与によりその活動を抑制した状態で上記の記憶課題遂行中の15O-H2O PETを行う事で、課題成績の低下、及びそれに伴うDREADD発現部位と下側頭皮質の活動低下をマクロレベルで明らかにした。本年度は、眼窩前頭皮質の抑制による視覚記憶ネットワークの作動変容のニューロン実体を捉えるべく、15O-H2O PETによって得られた下側頭皮質の記憶関連活動部位に電極を刺入し、上記課題中のニューロン活動を電気生理学的に記録して、我々が開発、報告した速い作動を示す新規DREADDアゴニストの投与による眼窩前頭皮質の抑制前と抑制後で同一の下側頭皮質ニューロンの活動を比較した。その結果、下側頭皮質の活動部位において記録されたニューロン活動は、上記課題において特定の視覚刺激の呈示期間と、それに続く遅延期間において有意な応答を示し、かつ眼窩前頭皮質の活動部位の抑制によって、最適刺激を呈示した試行の遅延期間において特異的に抑制される事が明らかになった。このことから、非空間的視覚記憶課題を遂行中の下側頭皮質ニューロンの活動は、最適刺激呈示後の遅延期間において眼窩前頭皮質からの入力の影響を受ける事が因果的に示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Neuroscience
巻: 23 ページ: 1157~1167
10.1038/s41593-020-0661-3