研究課題/領域番号 |
17H02229
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
今井 昭夫 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20203284)
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研究分担者 |
今村 宣勝 東京外国語大学, その他部局等, 講師 (00796154)
栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30195557)
村上 雄太郎 茨城大学, 工学部, 教授 (50239505)
野平 宗弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (80711803)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベトナム / 地域研究 / 中越関係 |
研究実績の概要 |
言語研究班は、平成30年にハノイ国家大学ベトナム学科とフエ外国語大学日本語日本文化学科で「日越両語の対照研究」についてワークショップを開催し、両校のスタッフと意見交換をおこなった。「非漢越語の名詞に前接する用法について」考察し、論文にまとめた。 宗教研究班は、中国系民衆宗教「明師道」のフィールド調査に取り組んだ。南部のカントー市、キエンザン省、ヴィンロン省、北部のハノイ市、タイビン省で調査を行ない、南部と北部では大きく事情が異なっていること、それにもかかわらず「ベトナム化」が進捗している点は共通していることが明らかになった。また中国国境地方で建立されている仏教寺院における内部装飾で使用されている文字についても調査をおこなった。再建されたモンカイの古刹サータック寺では漢字が使われていることが確認できた。 文学研究班は、19世紀の文豪グエン・ズーの漢詩「龍城琴者歌」「太平売歌者」などの翻訳・分析を進めた。また20世紀後半の思想家・詩人のファム・コン・ティエンの著作『深淵の沈黙』を翻訳出版した。同書では、西洋哲学概念を翻訳する際にベトナム人が漢越語を用いて翻訳していることを指摘した。そのほか、莫言、閻連科などの現代中国作家の作品のベトナム語訳リストを作成した。 歴史研究班は、中越戦争の位置づけについて把握するために、ポーヘンの国境警備隊駐屯地跡を見学した。その結果、同戦争は1990年頃まで続き、ベトナム共産党の要人が当地を訪問していることが明らかになった。 国際関係研究班は、中国研究所や東南アジア研究所などを訪問して専門家にインタビューし、南シナ海問題やカンボジア、ラオスにおける中国プレゼンスの問題について意見交換をおこない、ベトナムの「したたかで慎重な小国外交」ぶりを確認した。メディア翻訳では中国関連の約40本のベトナム語新聞記事を翻訳・校閲し、広く社会に発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
言語研究班は、漢越語に関する論文を1本まとめることができたが、ハノイ大学の孔子学院での中国語教育の実態について取材することができなかった。 宗教研究班は明師道についての調査は着実に進んでいるが、ベトナム在住の華人の宗教状況一般についての調査にまで手が回らなかった。 文学研究班は、翻訳の刊行では成果をあげたが、20世紀以降の漢文・漢詩主要作品リストの作成に着手することができなかった。 歴史研究班は、中越戦争の戦跡や追悼施設・戦死者共同墓地の実地踏査を始めることができた。しかし論文を公刊するまでにはいたらなかった。 国際関係研究班は、中越関係における「同志」性について考察した論文の発表や新聞記事へのコメントの提供など、一定の成果を収めた。概して、各研究分担者、各研究班は着実に研究を進めてきているが、平成29年度は本研究プロジェクト全体の総括的研究会を開催することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はなく、当初の計画に基づいて研究を推進していく。 言語研究班は、引き続き日本語母語話者のベトナム語学習者に役立つ漢越語研究をまとめていく。宗教研究班は、独立以降から現代にいたる明師道の歴史についてまとめ、もともと中国の民衆宗教であったものがどのようにベトナム化していったのかを究明する。 文学研究班は、朝貢使による「燕行文学」の比較研究といった視点から、19世紀漢詩の研究をすすめる。また近現代中国文学の影響についても、考察していく。歴史研究班は、ベトナムにおける中越戦争に対する評価の現状についてまとめていく。国際関係研究班は、東南アジアにおける中国のプレゼンスをベトナムの視点から研究していく。 平成30年度は、東アジアの冊封体制をタテの政治関係からだけではなくヨコの文化交流の視点からも捉えるような、研究プロジェクト全体のミニシンポジウムの開催を予定している。また本研究プロジェクトのホームページの作成にも着手したい。
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