研究課題
本研究は、東南アジア大陸山地部に小首長国における低地/山地関係の多様性を明らかにし、なにが多様性を生み出してきたのかに答えようとするものである。ラオス北部を対象に、低地における富の世帯間継承および社会の階層化、および低地と山地の住民の健康状態に焦点を当て、研究を行った。かつて首長国の中心であった1村で調査した結果、先行研究が示すとおり、王から授けられた称号をもつ首長や官吏の存在が認められた。しかし、その子孫たちの系譜や 水田相続を遡り、支配層が保有していた水田面積を過去50年にわたって復元したが、一般の 住民の保有面積と大きな違いがなく、水田の農業生産性の高さを背景として権力が育ったとはいえないことがわかった。低地民と山地民の20歳から60歳を対象として身体計測を行った 結果、BMIおよび身長に差がみられなかった。よって、水田や焼畑といった農業形態の違い や生態環境の違いによって、健康状態に差があるとは言えなかった。つまり、焼畑の農業生 産性の低さは、健康状態に反映していないと言えた。また、低地住民の方が、山地住民よりも酸化ストレスが高いことがわかった。低地における微量元素への暴露量が大きいことが原因のひとつと考えられた。ラオス北部の山地と低地の各1村を調査し、直線距離で10kmしか離れていないこれらの村間で、腸内細菌叢における種構成と種数において明確な違いが見られた。前者では400から2000種の腸内細菌種が推定できたのに対して、後者は200から900種であった。低地や山地といった微地形や微気象、および自然資源利用の違い、家畜飼 育形態の違いによって、環境細菌叢が異なることに加えて、食用とする植物の多様性が関係していると思われた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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