研究課題/領域番号 |
17H02236
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河野 泰之 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (80183804)
|
研究分担者 |
Badenoch Nathan 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 准教授 (50599884)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 東南アジア / 農業・農村 / 持続的発展 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、急激に変容しつつある東南アジア農業・農村を持続的発展へと導くための研究アジェンダの提案を目的とする。これにより、関連諸科学と協働する学際研究を強化するとともに、地域社会の成長に貢献しうる地域研究を推進する。平成29年度の主たる成果は以下の通りである。
1.研究メンバーの役割分担、4年間の研究スケジュール、メタ分析と合同フィールドワークの方法論、最終的に到達すべき成果を研究協力者と共有するために、京都と東南アジア各地でキックオフの会合を開催した。 2.東南アジア農業・農村動態の見取り図作成のためのメタ分析に着手した。とりわけ農村部への市場経済の浸透と経済成長が東南アジアにおいて普遍的に進行した1990年代以降の農業・農村動態に焦点を当て、関連資料の収集と分析を進め、農村から都市への労働力移動、農業の産業化、環境保全の担い手という3つの動きの抽出に努めた。 3.東南アジア農業・農村の動態分析のための合同フィールドワークを、ラオス・ベトナム国境地帯(平成29年5月)、ラオス・中国国境地帯(平成29年8月)、中国・ミャンマー国境地帯(平成29年11月)、カンボジア(30年2月)において実施した。これらを通じて、インフラ投資、国内向け及び国際市場向けの商品作物栽培の普及、労働力移動、企業家移動と農業投資等が農業・農村動態に与える影響を観察することができた。 4.これらの成果をもとに、雑誌論文 “Boom cropping as a trigger of rural livelihood commercialization: Coffee production in the Northern Mountain Region of Vietnam”等の執筆を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.東南アジア各国の研究協力者との協力体制の構築が計画通りに進んでいる。 2.東南アジア農業・農村動態の見取り図作成のためのメタ分析について、各国において作業を進めることができている。とりわけベトナムやミャンマーではすでに分析を深めることができている。 3.ラオス・ベトナム国境地帯における合同フィールドワークでは、ベトナムによる国境を越えたインフラ投資の影響を観察することができた。ラオス・中国国境地帯における合同フィールドワークでは、地方都市を基盤とする中国人移民社会の成り立ちとネットワークについて準備的な情報を収集することができた。中国・ミャンマー国境地帯における合同フィールドワークでは、ミャンマーから中国への労働者移動と中国からミャンマーへの起業家移動の双方向の動きが見られ、これらが商品作物栽培をけん引していることが確認できた。カンボジアにおける合同フィールドワークでは、プノンペン周辺とタイへの労働力流出と中国資本の飼料工場建設によるキャッサバやトウモロコシ等の飼料用作物の拡大が農業・農村動態の原動力となっていることが確認できた。 4.これらの成果をもとに、雑誌論文 “How cross-border inward migration affects smallholder land use practices in receiving country: Findings from the China-Myanmar border”、“Understanding the mobile land rental for fruit boom in the lowland of China-Myanmar-Laos border: Different places, same story”等の執筆を進めることができている。 したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、以下の方策により推進する。 1.東南アジア農業・農村動態の見取り図作成のためのメタ分析に引き続き取り組む。年2回開催する連続ワークショップで進捗状況を報告するとともに、東南アジア各国からのフィードバックを得て、平成30年度には見取り図の原型を作成し、平成31年度に完成させる。 2.重点研究対象地区において、東南アジア農業・農村の動態分析のための合同フィールドワークを引き続き実施する。平成30年度には地区ごとに、農村から都市への労働力移動、農業の産業化、環境保全の担い手という3つの動きの因果関係や双方向の影響の検証結果を中間報告として取りまとめ、平成31年度には各地区の検証結果を統合した最終報告書をまとめる。 3.研究アジェンダ提案のための連続ワークショップを引き続き開催する。平成30年度と31年度には、研究の進捗状況を共有し、東南アジアの生態的、社会的条件に関して吟味し、それらを研究アジェンダの提案へと展開するために、連続ワークショップを年2回開催する。また、平成31年度には、研究アジェンダの提案を主たる内容とする英文出版の構想をとりまとめるために、連続ワークショップを2回開催する。
|