研究課題/領域番号 |
17H02238
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土屋 由香 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90263631)
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研究分担者 |
小林 聡明 日本大学, 法学部, 准教授 (00514499)
隅田 学 愛媛大学, 教育学部, 教授 (50315347)
川島 真 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90301861)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 冷戦 / 広報外交 / 文化外交 / 科学技術 / アメリカ / 東アジア / 学知 / 専門知 |
研究実績の概要 |
4年間の科研研究期間の2年目に当たる本年度は、研究分担者・協力者が各自、資料収集と分析を進め、論文執筆や学会発表を活発に行った。これと並行して、最終成果物としての共著書編纂に向けて国際協力研究を活発化させた。具体的には、7月に京都大学にて、国際ワークショップ「冷戦期アジアにおける科学技術の交流と制度化」を開催した。韓国及びアメリカから研究協力者を招聘して研究報告を行っていただき、日本側の研究分担者・協力者がコメント及び討論を行った。12月には台湾国立政治大学にて、台湾の研究協力者らと共に共著書出版に向けたワークショップを開催した。また、1月には韓国高麗大学にて、韓国の研究協力者らと同様のワークショップを開催した。 こうした一連の活動を通して、冷戦期東アジアの科学技術広報外交に関する論点や研究方法、研究視覚がより明確になった。例えば、冷戦期の科学技術広報外交を論じる際に、植民地期の遺産が重要な要素であるという視点や、科学技術が広報外交の「手段」として用いられると同時に、科学技術そのものが冷戦期の広報外交的要請によって規定されて行くこと、さらには科学技術にとどまらずより広い「専門知」が、冷戦期の広報外交と深く関係していたという点などである。また、交付申請書にも記載した「アジアからの」広報外交という点については、改めて最終成果物の一つの基軸となることが確認された。 さらに、2019年度京都大学・「知の越境」融合チームプログラム(SPRITS)に、本科研研究の成果を多国語(日本語に加えて英語・中国語)で出版するプロジェクトを申請し、採択された。これにより、本科研研究で培われた国際協力体制をさらに深化させ、長期的な共同研究拠点の形成に繋げて行く下地を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書には、「2年目となる本年度は、海外の研究協力者と連携を深める。まず前半期(7月)にアメリカおよび韓国から研究協力者を招いて日本(京都)でワークショップを開催し、後半期(1月)には韓国の研究協力者と合同でソウルでワークショップを開催する。また前年度に台湾国立政治大学で開催したワークショップを基盤として、台湾の研究者との連携も深める。」と記載していた。 目標通り、7月に京都大学にて研究代表者・研究協力者が参加する国際ワークショップを開催し、1月には韓国・高麗大学にて韓国の研究協力者と合同でワークショップを開催した。さらに、前年度に台湾で開催したワークショップの延長として、第2回の台湾ワークショップを12月に台湾国立政治大学にて開催した。これらにより、当初予定されていたプログラムを全て達成した上、計画以上に国際共同研究を深化させることができた。これに加えて、京都大学の学内競争的資金である「知の越境」融合チームプログラム(SPRITS)に申請し採択されたことで、科研研究の最終成果を日本語のみならず英語と中国語でも出版するという目標が定められ、それに向けて国際共同研究を加速させることができた。日本語版の共著書については、すでに出版社との交渉も順調に進んでいる。これらのことを総合すると、当初の計画以上に進展していると言って間違いないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
各研究分担者・協力者は、本年度までの研究成果に基づき、共著書の分担章の執筆を進める。8月末までに、執筆者(日本人・韓国人・台湾人・アメリカ人、合計12~3名を予定)は題目と要旨を共有ファイルにアップロードし、各自が互いの執筆内容を参照しながら、論文の完成を目指す。12月初めまでに、第1稿(草稿)をアップロードし、英語以外の論文は英語に翻訳して、互いの原稿を読めるようにする。1月11日に京都大学にて、執筆者全員が集合して、共著書の出版に向けた国際ワークショップを開催する。そこでの議論を基に各執筆者はさらに研究を進め、原稿を改訂する。3月末を目途に、最終稿を提出していただき、2020年12月の刊行を目指して、編集・翻訳作業を開始する。こうした一連の作業を通して、冷戦期東アジアにおける広報文化外交と科学技術の相互関係、特に、アジアからの情報発信が、科学技術をはじめとする「専門知」や「学知」の形成にどのような影響を及ぼしたかが明らかになるであろう。本科研研究が冷戦期東アジアにおける外交と「知」(Knowledge)との関係に新たな光を当てることが出来るように、最終的な共同研究の成果を目指す。
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