研究課題
本共同研究は、東南アジアあるいはオーストラリアを研究対象とする研究者から構成され、「海境」を鍵概念として移動する人びとの視点から「境界」の多元性を実証的に描き出すことを目的としている。「東南アジア」と「オセアニア」で分断されてきた境域の研究に新たな視座を提供する上で、本共同研究は着実に成果を生み出しつつある。研究協力者を含む10名のメンバーは、「辺境」で生業を営む社会集団の変容や生存戦略、越境移動をする人びとの国家・社会集団への帰属意識や境界認識など、オーストラリア、インドネシア、日本のそれぞれの調査対象とする地域や社会集団での聞き取り調査、および史資料の収集・分析を行った。さらにオーストラリアやニュージーランドで中央政府の「周縁部」に対する政策や、主流社会での表象および対抗言説の調査も行った。現地調査は以下の通り:豪州(キャンベラ、メルボルン、シドニー)、ニュージーランド(ウェリントン)、インドネシア(南スラウェシ州、トゥンガラ州ロテ島)、日本(神戸市、藤枝市、横浜市、気仙沼市)。さらに訪問先ではオーストラリアおよびインドネシアの研究者との意見交換や合同での現地調査を行った。日本国内では前年度より研究を進めてきた「村松治郎」の係累の方々から貴重な史料を得て史料のデジタル化を行うと共に、日英両語で村松治郎に関する報告書を刊行した。問題意識と研究成果を共有するため研究会を開催した。第1回:マレーシアーインドネシアの境域のサマ人の越境移動と社会変容に関する報告;第2回:共同研究の成果報告出版に向けての意見交換。さらに、気仙沼市で開催した第2回研究会は、気仙沼市で働くインドネシア人との交流(聞き取り調査)および気仙沼市の取り組みに関する調査を行い、日本の地方都市が経験する越境移動と社会変容に関する新たな知見を得ることができた。
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