研究課題/領域番号 |
17H02245
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森 ます美 昭和女子大学, 生活機構研究科, 特任教授 (70141281)
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研究分担者 |
浅倉 むつ子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80128561)
大槻 奈巳 聖心女子大学, 文学部, 教授 (30356133)
鬼丸 朋子 中央大学, 経済学部, 教授 (00325557)
禿 あや美 跡見学園女子大学, 公私立大学の部局等, 講師 (00388597)
長谷川 聡 専修大学, 法学部, 准教授 (30458632)
山縣 宏寿 諏訪東京理科大学, 経営情報学部, 講師 (80588773)
山田 省三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30276696)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同一価値労働同一賃金 / 同一労働同一賃金 |
研究実績の概要 |
本課題に関する研究は、当初の計画通り、社会政策と労働法の各グループで進め、平成29年9月25日の合同研究会と、年度末の平成30年2月27-28日の春合宿で両グループの研究成果を共有し、平成30年度の研究計画を確認した。以下、各グループの平成29年度の研究実績である。 社会政策グループは、①賃金制度に関する先行研究サーベイを行い、日米・日英の賃金制度等に関連する5本の文献を読み、議論を深めた。②正社員と非正規社員間の「同一労働同一賃金を実現する賃金制度・人事制度」への改定を実施した企業5社の人事部および労働組合へのインタビュー調査を行い、その詳細について理解を深めた。③2018年度に実施予定の職務評価・新たな賃金制度構築のモデル企業として、民間企業数社に協力を打診してきたが、家電量販店A社、B社、C社の会社及び労働組合から協力の了解を得た。次年度はこの3社を対象にインタビュー調査と「仕事の評価のアンケート」調査を実施する。 労働法グループは、①日本の同一労働同一賃金をめぐる法学的側面からの研究・裁判例に関する文献収集をおおむね完了し、検討を行った。これを通じて日本において同一価値労働同一賃金原則を理論化する意義や論点を明らかにし、今日の立法の動きを評価する視座を得た。②また主な比較法研究の対象であるカナダ・オンタリオ州の賃金衡平法に関する邦語文献の収集をおおむね完了し、オンタリオ州政府が公表しているガイドラインや審判例を入手した。これらを基礎にプロアクティブな同州の同一価値労働同一賃金原則の実施システムが日本に有益な示唆をもたらしうることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況については、社会政策グループは「おおむね順調」に進んだが、労働法グループは「やや遅れ気味」である。全体としては、当初の予定よりやや遅れている。 社会政策グループは、先行研究サーベイにより、賃金制度に関する研究への理解を深め、企業人事および労働組合へのインタビュー調査の実施により、現時点の日本における正社員と非正規社員間の「同一労働同一賃金」に関する人事・賃金制度の現状及び雇用均等・均衡策の実際に関する知見を得ることができた。平成30年度に職務評価調査を実施し、新たな賃金制度構築の事例となる民間企業3社の選定も済み、平成30年5月より調査協力企業の店舗等でのインタビュー調査を実施する予定であり、研究は順調に進んでいる。 労働法グループは、同一価値労働同一賃金原則及び同一労働同一賃金原則に関する日本の理論状況の整理は予定通りほぼ完了した。現在進行している同一労働同一賃金原則の明文化に向けた動きを評価する基盤がおおむね整い、この評価を補強する比較法的素材の充実を待つ状態にある。反面、カナダ・オンタリオ州の賃金衡平法に関する研究については、同法の制度概要や実効性確保の仕組みを明らかにすることはできたものの、同法の仕組みや運営を支える理論的基礎、運営における実務上の課題の所在を十分に明らかにすることができなかった。これは賃金衡平法に関するカナダの研究者の研究論文等を予定通り入手することができなかったこと等による。
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今後の研究の推進方策 |
社会政策グループは、新たな賃金制度構築の事例となる民間企業3社(家電量販店A社、B社、C社)において、職務評価の対象職種の絞り込みを行い、人事部・労働組合・対象職務担当者へのインタビュー調査を実施し、職務分析を行う。職務分析をふまえて、職務評価システムを策定する。A社、B社、C社の職務評価を行う調査票「仕事の評価のアンケート」を作成し、職務評価を実施する。平成31年3月上旬にカナダ・オンタリオ州で現地調査行い、賃金衡平法が規定する同一価値労働同一賃金原則に基づいた人事・賃金制度を有する民間企業を訪問し、インタビュー調査を行う。 労働法グループは、平成30年度はカナダ・オンタリオ州の賃金衡平法に関する研究を中心的に行う。平成30年度より研究分担者に加わったカナダ労働法、特に差別禁止法を研究対象とする福岡大学の所浩代准教授の知見を加え、賃金衡平法をめぐる問題状況を連邦法や行政機関の活動も視野に入れながら包括的に検討する。これを基礎として平成31年3月上旬にオンタリオ州において現地調査を実施し、賃金衡平委員会はじめ賃金衡平法の運用に関わる諸機関・組織へのインタビューを行う。この機会に賃金衡平法に関する立法資料や研究論文を現地で入手し、制度の趣旨や理論的基礎、法律や判例に表れない同一価値労働同一賃金を職場において実現する際の現実的課題を明らかにする。 平成30年度も、両グループの研究の進捗状況を共有するために平成30年8月29日に合同研究会を行う。またカナダ・オンタリオ州の現地調査終了後に、調査結果を全員で共有するための合宿を行う予定である。
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