研究課題/領域番号 |
17H02245
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森 ます美 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (70141281)
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研究分担者 |
大槻 奈巳 聖心女子大学, 文学部, 教授 (30356133)
鬼丸 朋子 中央大学, 経済学部, 教授 (00325557)
禿 あや美 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 教授 (00388597)
長谷川 聡 専修大学, 法学部, 教授 (30458632)
山縣 宏寿 公立諏訪東京理科大学, 共通・マネジメント教育センター, 講師 (80588773)
所 浩代 福岡大学, 法学部, 教授 (40580006)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 同一価値労働同一賃金 / 職務評価 / 家電量販店 / オンタリオ州 / ペイ・エクイティ法 |
研究実績の概要 |
本年度も社会政策と労働法のグループを基礎に研究を進め、平成30年8月の合同研究会と平成31年3月の春合宿で、双方の研究成果を共有し、次年度の研究計画を確認した。以下は平成30年度の研究実績である。 社会政策グループは、①新たな賃金制度構築の事例となる企業2社(大手家電量販店A社、B社に決定)において、人事部、労働組合に人事制度・業務実態等の聞き取り調査を行い、職務評価の対象職種を絞り込んだ。②4店舗・35人の対象職種従業員に担当職務に関するインタビュー調査を実施した。③その結果を基に、入念な職務分析を行い、職務評価システムを策定した。同時に、A社、B社従業員の職務評価を行う「仕事の評価についてのアンケート」を作成した。④人事部・労働組合と調査の実施要領、企業から提供を受ける賃金データ等の確認、従業員からの同意書の取得等について検討を重ねた。⑤平成31年2~3月に2社の正社員、非正規社員を対象に同「アンケート」を実施した(2,194票回収)。 労働法グループは、①本年度の主要課題であるカナダ・オンタリオ州での現地調査に向けて、ペイ・エクイティ法及びカナダ連邦法に視野を広げて資料収集を継続し、ペイ・エクイティ法の法的位置づけと論点をより精密に分析した。②これと並行して現地での調査項目を精査し、インタビュー希望の行政機関や労働組合、研究者等と訪問依頼の交渉を行った。③その結果、平成31年3月3日~10日にオンタリオ州を訪問し(当初平成30年9月を予定していたが、訪問先との調整により3月に変更。参加メンバー6人)、同州賃金衡平委員会、USW Local 1998、カナダ公務員連合会、ペイ・エクイティ法制定に深く関与した学識者3名等にインタビューを実施した。④本調査では、ペイ・エクイティ法に関する行政の指針や対応例、労使が職務評価に取組んだ具体的手順等に関する貴重な資料を入手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況については、労働法グループは「おおむね順調」に進んだが、社会政策グループは当初の計画の変更に依って調査・研究が「やや遅れ」、そのため平成30年度補助金交付金の一部を繰越申請した。 労働法グループは、オンタリオ州での現地調査によりペイ・エクイティ法に関する立法資料や研究論文を入手し、制度の趣旨や理論的基礎、法律や判例に表れない同一価値労働同一賃金を職場において実現する際の現実的課題など、今年度の当初の目的はおおむね達成された。特に現地調査においてペイ・エクイティ法創設期から同法の運用や展開に関わってきた実務家や学識者から意見を聴けたことは研究の深化に極めて有益であった。しかし他方で、ペイ・エクイティ法に関する理論的研究を行った文献は現地のトロント大学においても十分に見つからず、この点に関する研究方法の再検討を要することが明らかになった。 社会政策グループは、当初「仕事の評価についてのアンケート」の実施への協力、賃金データ等の提供は労働組合から得られることになっていたが、企業労使の話し合いにより人事部が窓口になること、かつ、賃金等個人情報の提供には、各従業員の「同意書」の取得が不可欠との指摘を受けた。改めて人事部・労働組合と提供を受ける個人情報や従業員からの同意書の取得方法、調査協力店舗等の検討、調整を行った。そのため対象職種従業員へのインタビューの開始が遅れ、当初予定の「調査」集計・データ作成、回答者への謝礼の送付等が平成31年度4月にずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
社会政策グループは、家電量販店A社、B社の正社員、非正規社員を対象に行った「仕 事の評価についてのアンケート」の集計、分析を進め、職務評価結果から担当職種・職務の価値を明らかにする。A社のみ、B社のみ、2社合計の調査結果データと各企業人事部から提供を受けた賃金・労働時間データ等を用いて、職種別、男女別、等級別等の分析を行う。分析データを用いて、職種・職務の価値に対応した賃金ランキングを作成し、同一価値労働同一賃金原則に基づく当該企業に適合的な新たな賃金制度の設計を試行する。 労働法グループは、現地調査で得られた資料や情報、さらにトロント大学在外研究中の所教授(2019年8月まで滞在)からの最新情報によって、カナダ連邦及びオンタリオ州におけるペイ・エクイティ実現に向けた新たな動きを分析する。特に同法の実効性確保において重要な役割を果たしている行政及び労働組合の取組みに着目する。他方で日本における同一(価値)労働同一賃金原則に関連する近年の非正規労働者の訴訟や判例を収集・分析し、日本で賃金衡平計画等プロアクティブな賃金格差是正や同一価値労働同一賃金原則を実現するための実効性確保の仕組みを構想するにあたっての課題を検討する。
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