研究課題/領域番号 |
17H02255
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
四本 幸夫 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (50449534)
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研究分担者 |
VAFADARI Kazem 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (70628049)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 世界農業遺産 / 農村振興 / 観光 / システム / ブランド / 地域資源 / 住民主体 / 地元推進組織 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究では、日本の世界農業遺産認定地域にある53の自治体に対して、アンケート調査をおこなった(新たに認定された3地域にある自治体は除く)。
調査からは、世界農業遺産関連の観光による農村振興には、5つの成功のタイプが発見された。それらは、1.観光客誘致の準備(旅行商品化可能性調査、リーフレット作成)、2.ツアーの開催(バスツアー、体験ツアー、棚田散策)、3.イベントの開催(祭り、イルミネーション)、4.住民の参加(住民活動支援、住民出資の組織形成)、5.プロジェクトの推進(グリーンツーリズム、スローツーリズム)である。また、世界農業遺産関連の観光による農村振興を行う際の、企画段階での問題点は主に8つあった。それらは、1.地域資源(地域独自の資源をどう掘り起こし、既存の資源をどう整理するのか、どのように観光資源として磨き上げていくのか)、2.住民主体の組織(住民主体の組織を形成できるかどうか。どのように地元推進組織を作っていくのか。行政支援引きあげ後、組織が住民主体で継続できるか。)、3.ブランド力(どのように世界農業遺産地域としてのブランド力を上げるのか。)、4.住民意識(いかにして地域住民の当事者意識を高められるのか。)、5.システムを売る難しさ(世界農業遺産が“モノ”ではなく“システム”を認定する制度のため、説明が難しい。目に見えないシステムをどう可視化するのか。)、6.観光客受け入れ態勢(観光客を受け入れる環境整備が必要。また、観光客を迎える人員確保も必要。)、7.効果測定(世界農業遺産関連の観光による農村振興では、どのように事業効果の検証をするのかについて明確な方法がなく、効果測定の方法を確立する必要がある。)、8.世界農業遺産を使った観光への懐疑(世界農業遺産=観光というイメージをとらえるのは難しいので、どれだけの観光客が増えるのか疑問。)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、研究の進捗状況をやや遅れているとしたが、2018年度は、アンケート調査で期待通りの成果が出たので、研究の進み具合は順調である。この研究目的は、観光を用いた農村振興に関して:(1)8地域共通の課題とそれぞれの地域特有の課題を明らかにする;(2)ベストプラクティスを見出し、その要件を明らかにし、地域に役立つモデルを提示する;(3)ユネスコ世界遺産との相違を明らかにするというものであるが、(1)の目的は、アンケート調査を通して概ね明らかになった。これまで、能登半島地域(石川県)、宇佐・国東地域(大分県)、長良川地域(岐阜県)、高千穂峡・椎葉山地域(宮崎県)の現地調査で詳細なデータを収集しており、アンケート調査を補足している。(2)の目的も、アンケート調査と現地調査でいくつかの好事例を見つけることができた。(3)の目的は、すでに論文として完成させており、ジャーナルに投稿し、査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進計画であるが、2019年度は、みなべ・田辺地域(和歌山県)、阿蘇地域(熊本県)、佐渡地域(新潟県)、掛川地域(静岡県)での現地調査をおこない、更なるデータ収集と分析を行っていく。また、韓国での東アジア農業遺産学会で、アンケート調査の結果を発表するが、その時に得るだろうフィードバックを今後の研究に活かしていく予定である。
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