本研究では、医療における物語論の新たな展開に哲学的基礎づけを与える理論を体系的に構築することを目的とし、3つの仮説を得た。(1)エビデンス・ベイスト・メディスンは実在論、物語的実践は構築論である。どちらも「個々の患者の健康上の問題解決」を目的とするが、前者が公平性、後者が公正性の倫理原則に基礎づけられ、前者が「標準化されたケアの提供」を、後者が「個別化されたケアの提供」を行動規範とする。(2)ヘルスケアの関心領域には、身体機能、生活機能、人生史があり、いずれを射程に入れるかで、実在論と構築論のいずれに基礎を置くかの差異が生じる。(3)物語的実践は、「解釈」「調停」「介入」に分類可能である。
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