研究課題/領域番号 |
17H02271
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
小路口 聡 東洋大学, 文学部, 教授 (30216163)
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研究分担者 |
早坂 俊廣 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (10259963)
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
伊香賀 隆 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 研究員 (20722995)
播本 崇史 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (40813572)
吉田 公平 東洋大学, 東洋学研究所, 客員研究員 (70036979)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 陽明学 / 陽明後学 / 良知心学 / 講学活動 / 会語 / 書院 / 哲学資源 / 国際交流 |
研究実績の概要 |
①研究会:初年度の計画にもとづき、陽明学派の学者が中心となって開催した講会の参加者によって書かれた、複数の記録(会語資料)を集め、それらを付き合わせて検討することを通して、講学活動の実態、そして、そこにおける議論の中身を 、さらに丁寧に分析検討していく。2018年度は、「惜陰の会」「青原の会」「龍華の会」の会語資料を中心に読んできたが、2019年度の研究会では、5月に箱根で、及び、2020年1月に福岡で、研究会を開催し、「復古書院」関係の会語資料を、鶴成久章作成のレジュメをつかって、会読吟味した。その研究成果については、前回のものと合わせて、学術雑誌『白山中国学』通巻26号に、2回に分けて発表した。
②シンポジウム開催:海外研究協力者の呉震教授(復旦大学哲学学院)との共催で、中国の復旦大学哲学学院において、9月14日、15日の2日間にわたって、「中国哲学的豊富性再現―荒木見悟与中日儒学国際研討会」と題した国際シンポジウムを開催した。日本・中国・韓国から29名の研究者が参加して研究発表・討議を行った。研究論集は、日中両国で出版公刊する予定、とりあえず中国語の原稿を、4月一杯に提出し、来年には中国で刊行の予定である。日本刊行は未定。(個人名の明記については先方の許可を得ている)
③実地調査:今年度は、②に記載した復旦大学でのシンポジウムの終了後、湖南省の長沙・湘潭・衡陽講学関係の遺跡を調査した。長沙では、湖南大学構内にある岳麓書院、および、城南書院址を、湘潭では碧泉書院址・胡安国墓を、衡陽では石鼓書院を見学した。湖南大学では、岳麓書院の鄧洪波教授・青山大介特聘副教授・田訪助理教授らと交流した。また、湘潭大学を訪れ、副学長の劉建平教授、碧泉書院院長の陳代湘湘教授、副院長の周【馬+華】同書教授や、大学院生と交流した。(個人名の明記については先方の許可を得ている)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査、および、研究交流という点では、毎年の調査旅行、および、そこでの現地の研究者たちとの交流をとおして、順調に実施し、有意義な成果を得ている。今年度は、その上、更に、海外協力研究員の呉震教授の所属する復旦大学哲学学院との共催で、日中韓の中国哲学研究者を中心にした国際シンポジウムを開催することができた。極めて有意義な成果を得た。陽明講学の会語資料の収集・整理・分析についても、試行錯誤を繰り返していく中で、徐々に方向性が見えてきており、順調に業績をあげている。また、前回、遅れを指摘した地域別の総合的データベース(デジタルコンテンツ)の作成については、担当者が本務校で重責の役職に就いたことで、計画を変更して、現在、訳注を整理し、刊行を目指している『龍渓会語』の地名用語集と地図というかたちで代用することにした。『龍渓会語』全訳注の副産物として編集している『「龍渓会語」を読む人のための哲学用語集』(仮題)に付録として掲載する予定である。こちらも、刊行を目指して、順調に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年1月に突如発生した新型コロナウイルス感染による肺炎の世界的流行は、パンデミックが宣言され、全世界で都市封鎖・海外渡航禁止の措置がとられている中、最終年度に予定した国際シンポジウム、および、中国への現地調査の実施を断念せざるを得ない事態を迎えそうである。先の見えない状況に、研究計画の変更を余儀なくされているが、収束を願いつつも、今年中は長引くことを前提に、最終年度は、これまでの研究成果の集大成を行いたい。王畿の『龍渓會語』を中心とした、陽明後学の会語資料の研究については、すでに始まりから10年の歳月が経過したが、その間、3回、科研を獲得し、研究を続けることができた。これまでに蓄積した、有形無形の哲学資源を有効活用すべく、次の3つの計画を立て、現在進行中である。①『龍渓会語』全訳注の編集整理、そして、刊行、② ①の副産物として編集する『『龍渓会語』を読むための哲学用語辞典 附:人名・地名用語集』、③一般向けの読み物としての『『龍渓会語』を読む――良知心学の世界―』の編集刊行。いずれも、すでに原稿はほぼ8割がた完成しており、次年度に向けての刊行を目指して進行中である。また、別途、海外研究協力者である、銭明教授と呉震教授の王陽明と陽明後学の講学関係の論文を集めた論文集の刊行を準備中である。
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