研究課題/領域番号 |
17H02276
|
研究機関 | 東京純心大学 |
研究代表者 |
宮本 久雄 東京純心大学, 看護学部, 教授 (50157682)
|
研究分担者 |
土橋 茂樹 中央大学, 文学部, 教授 (80207399)
桑原 直巳 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20178156)
出村 和彦 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30237028)
上村 直樹 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (40535324)
高橋 英海 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20349228)
山本 芳久 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50375599)
袴田 渉 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (70726588)
袴田 玲 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特任助教 (30795068)
坂田 奈々絵 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特別研究員 (30795109)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 宗教学 / キリスト教 / 教父 / 相生 / 共生 |
研究実績の概要 |
本研究は、キリスト教教父の残した壮大な思想的・文化的遺産を「相生(相生かし、相生かされ、相生く)」概念を鍵として検証し、キリスト教研究の新たなアプローチの構築およびキリスト教思想の現代社会への適用方法についての示唆を得ることを目的とし、相生に関するテクストの読解と、そのキリスト教の典礼や建築・美術における表象の分析を多分野横断的に推進している。 上記研究目的の下、本年度は始動の年に当たって①「西方古典教父」、②「東方古典教父」、③「教父思想の受容と展開」、④「教父思想の表象」を主として扱う四つの研究班を組織し、それぞれの対象領域についてまずは各々の研究班において基礎となるテクストの分析を行った。すなわち、研究班①ではアウグスティヌスの『説教』、研究班②ではニュッサのグレゴリオスの『魂と復活について』および偽ディオニュシオス・アレオパギテースの『神名論』、『教会位階論』、研究班③ではトマス・アクィナスの『説教集』、『ギリシア人たちの誤謬について』、グレゴリオス・パラマスの『説教集』、バルヘブラエウスの『聖所の燭台』、『エーティコン』の再検証および翻訳をそれぞれ進めた。研究班④では研究班②で取り組んだ偽ディオニュシオス『教会位階論』のテクスト分析を共有しつつ、後期ビザンティン典礼の代表的解釈書であるニコラオス・カバシラス『聖体礼儀註解』の読解に着手した。 また、9月と11月には外部から講師を招いて研究会を開催し、古典教父研究に資する新たな知見を得るとともに、活発な議論を行った。さらに、12月には本科研メンバーを中心として公開シンポジウム「愛について──エロース・アモル・カリタス」を開催し、その成果は論集『愛と相生──エロース・アガペー・アモル』として3月に出版した。その他、国内外の学会および学術誌上にて発表された研究代表者および研究分担者の研究成果については業績欄を参照のこと。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にあたる本年度は、四つの研究班それぞれに分析の基礎となるテクスト読解を進める計画であったが、予定されていたテクストからの多少の異同はあるものの、いずれの研究班においても順調にテクスト読解が進んでいる。 また、頻繁な研究打ち合わせと年に四回の定例研究会の実施に加え、外部から講師を招いてさらに二回の研究会を行うなど、研究代表者および九名の分担者の間では本研究課題にかかる研究目的の共有と緊密な研究連携が実現している。 さらに、本研究課題の概要と初年度の研究成果は、公開シンポジウムの開催とそれに基づく論集の刊行、および、研究代表者と九名の研究分担者それぞれによる各種講演会・学会発表・学術誌・一般誌上での論文発表を通じ、キリスト教研究・教父研究に携わる他の研究者のみならず分野を超えて学界・一般社会に広く公開され、還元されている。 以上の理由により、本研究は研究計画に従っておおむね順調に進展していると自己評価される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、キリスト教教父の残した壮大な思想的・文化的遺産を「相生」概念を鍵として検証し、キリスト教研究の新たなアプローチの構築およびキリスト教思想の現代社会への適用方法についての示唆を得ることをめざし、四つの研究班がそれぞれ相生をキーワードに教父の残したテクストの読解および教父とそれに続く時代の歴史の再検証を進め、研究打ち合わせ・研究会・シンポジウムを通じた研究代表者および研究分担者間の緊密な意見交換を行う。 また、2018年度以降はフランス・トルコ・レバノンなど海外における現地調査(キリスト教の典礼や建築・美術に現れる相生の表象の分析)や海外の研究者との学術交流(国際学会の場での本研究課題にかかるワークショップやV. Kontoumaフランスビザンツ研究所所長をはじめとする海外の教父研究・ビザンツ研究の第一人者を招聘しての講演会・シンポジウムの開催)を開始し、2018年度末にはそれまでの研究成果をまとめた欧文論集も刊行する予定であり、国内のみならず国際的な発信力をいっそう強めていくことが見込まれる。 さらに、最終年度までには、本邦でまだ翻訳の存在していない重要な教父とそれに続く時代の思想家のテクストを翻訳し、刊行することを予定している。
|