研究課題/領域番号 |
17H02290
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (40168274)
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研究分担者 |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
岩佐 光晴 成城大学, 文芸学部, 教授 (10151713)
大島 幸代 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60585694)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 弥勒 / 兜率天 / 浄土 / 上生経変 |
研究実績の概要 |
本年度は海外調査として、中国山西省の仏教史蹟を中心に調査を行った。平順県の大雲寺では、以前から可能性が指摘されていた本堂(弥陀殿)仏後壁に五代の弥勒上生変があることを、本堂に付属する経幢の発見内容によって確認することができた。 開化寺本堂(大雄宝殿)の壁画は、北宋代の仏教寺院壁画では重要な遺品であることは従来から知られていた。華厳経変が画題の主要部分を占めるのだが、その一角にある観音法会とされていた箇所について、精査した結果、まぎれもない弥勒上生変(兜率天宮会)であることを発見することができ、大きな成果があった。この図様に近いのは、以前に調査した甘粛省文殊山万仏寺にある西夏代の弥勒経変であり、さらに遡る作例が見いだせた点は重要な研究材料になった。 山西省雲岡石窟は、交脚弥勒菩薩のメッカともいえる北魏時代の石窟群である。石窟の編年にはいくつかの説があり、とくに中期・後期の造像の中で、窟内の一角全体が下方を現世、上方を兜率天(弥勒浄土)として表現するかのような尊像構成がなされていることを複数の石窟で実見できた。弥勒の交脚像は菩薩形だけではなく如来形にもその形式が及んでおり、本石窟群における兜率天をめぐる構想についての議論を進める必要があることを確認できた。 国内調査では、大分県の耶馬溪羅漢寺に南北朝時代に造営された石仏群を実地調査した。釈迦没後、未来の弥勒の出現まで仏法を保持する役割を託された五百羅漢の実例を熟覧したほか、この五百羅漢石仏群がある無漏窟からやや離れた高台に小窟を設け、弥勒菩薩の単独象を造営していたことを確認できたことは、大きな成果である。やはり兜率天構想がここにあったことは疑いない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査先として予定していた山西省の石窟・仏教史蹟は、ほぼ当初の予定どおり、目的とする拠点を実見することができ、問題なく進捗している。 国内調査について、弥勒の画像・彫像は所蔵者の都合の問題もあって、当初の予定どおりとはいかない点もあるが、代替調査先を設定し、当科研テーマに関連する遺跡を実見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作成した全体計画にもとづき、今後も弥勒の造像とその浄土である兜率天の造営・作画の例を調査してゆく。本年度に発表参加したシンポジウムで、中国・西域地方におけるあらたな造像の知見が得られ、引き続き調査を継続してゆきたい。
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