研究課題
1492年に達成された国土再征服と、新大陸航路の発見という二つの重大事を象徴的な契機として、ヨーロッパの周縁に位置したスペインは、16世紀を通して広大な帝国を構築する。その帝国は、アイデンティティを異にする様々な人々を統合する文化の交通空間であり、そこでは、多様な図像文化や造形様式、技法・素 材が時に起源の差異を超えて組み合わされ、あるいは、本来とは異なる意味のもとに解釈・転用され た。本研究は、スペインを中心とするイスパニア世界に成立 した、その「境界的」 な美術の諸相を、歴史的な経緯と地理的広がりの両面から体系的に明らかにすることを目標とする。本年度は、研究プログラムの実質的最終年度として、成果の取りまとめ作業を進めた。国内メンバーに関しては、7、8、9月に3回にわたりオンラインで研究会を開催し、全員が最終的な報告を行った。また、昨年度までに招聘した4名の海外研究者についても、成果論文の提出を受け、翻訳と最終的な調整の作業を行った。これらの論考は、ムスリム勢力との交渉を一つの軸として展開した中世スペインの遺産が、16世紀のスペイン世界帝国の美術にどのように接続されたのか、その帝国のヨーロッパ版図内でどのような美術の交通が行われたのか、さらに、新大陸をはじめとする海外植民地を含むグローバルな交通網において美術作品がどのように流通・移動したのかについて、様々な新知見が提起されている。これらの成果は、『帝国スペイン、交通する美術』(岡田裕成、伊藤嘉彦、今井澄子、川村やよい、久米順子、松原典子、パク・ジョンホ、アルベルト・バエナ、マリア・フェリシアノーノ著、三元社)のタイトルのもと、まもなく公刊の予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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美術フォーラム21
巻: 42 ページ: 15-21
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