研究課題/領域番号 |
17H02299
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大久保 清朗 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (00624719)
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研究分担者 |
野崎 歓 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (60218310)
木下 千花 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (60589612)
三浦 哲哉 青山学院大学, 文学部, 准教授 (70711844)
伊津野 知多 日本映画大学, 映画学部, 准教授 (80308147)
堀 潤之 関西大学, 文学部, 教授 (80388412)
角井 誠 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (90803122)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 映画 / 映画批評 / 映画理論 / リアリズム |
研究実績の概要 |
本年度においては、本科研「アンドレ・バザンの批評の総合的再検討」の研究対象であるアンドレ・バザンが生誕100年を迎えた。この記念すべき年に、科研の研究分担者および研究協力者によって構成される「アンドレ・バザン研究会」(以下、研究会)は、昨年度までの研究を継続しつつも、その業績の今日的意義を広く発信する活動に力を注いだ。具体的には2018年11月11日にイベント「バザン・レリス・闘牛 映画『闘牛』の上映」を開催した。そして12月にはバザン生誕100年記念シンポジウムを2箇所で行った。まず第1部を「21世紀のアンドレ・バザンに向けて」と題し東京大学に行った(12月16日)。ここではバザン研究の第一人者であるイエール大学のダドリー・アンドルー氏による基調講演から始まり、映画監督の濱口竜介氏、アンドルー氏、研究会会員の野崎歓と三浦哲哉を交えてのラウンドテーブル「バザンのアクチュアリティ」、堀潤之、伊津野知多、角井誠による研究発表を行った。次に第2部を「映画とアダプテーション――アンドレ・バザンを中心に」と題し山形大学で行った(12月20日)。ここでは第1部に引き続きアンドルー氏の基調講演、フランス文学研究者の吉村和明氏、研究会会員の須藤健太郎と大久保による研究発表と討論会を行った。 12月のシンポジウムの内容は、第1部におけるアンドルー氏の講演「この残酷な世界へのバザンのインテグラルな視座」を中心として、研究会の年刊誌『アンドレ・バザン研究』第3号に収録した。両方のシンポジウムで司会をつとめた野崎による新たな小論に加え、三浦によるアンドルー氏への応答、濱口氏のエッセイを、さらに小特集として「映画とアダプテーション」を組み、バザンの未訳の論考「脚色、あるいはダイジェストとしての映画」に(堀による翻訳と訳者解題)加え、吉村氏、須藤の論考を収めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
かねてより研究会はアンドレ・バザン生誕100年にあたる2018年が重要な年になることを研究会員一同が理解し、前年度から準備をつづけてきた。12月におけるシンポジウムと前後し、本国フランスにおいてもバザンの全集が初めて刊行されたことも、研究会の活動を大いにうながしたといえる。結果的に、そうした努力と気運は、3回におよぶイベント、シンポジウム開催となって結実し、それぞれが非常に充実したものとなった。 これらのシンポジウムの内容の一部は、研究会誌『アンドレ・バザン研究』第3号という成果物として残すことができた。第1号、第2号と翻訳と解説を中心とした内容であった会誌において、今回は研究会会員による論考と招聘研究者、文学研究者、映画監督といった多彩な顔ぶれによる論考がそろい、本研究の活動のさらなる展開の可能性を印象づけることができたといえる。以上のような理由で、当初の目的を十分に果たすことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初、予定されていた、「占領下フランスの文化状況におけるバザン」については、バザン生誕100年のために十分な検討がなされていない。しかし今年度においてサブテーマとして設定していた「バザンと現代思想」をめぐる検討については、昨年度のダドリー・アンドルー氏による「インテグラル」(全体的、積分的)なバザン像によって検討がなされた。今後の研究は、「バザンとフランス」あるいは「バザンと世界」といったより広い視野に立ちながら研究を進めていくのが望ましいと考えている。またすでに再検討を行ったとはいえ「作家主義」「リアリズム」の問題についても、ここ2年のうちに発表された研究を踏まえ、さらに探求を継続することも検討中である。 また昨年度は、新たな試みとして映画上映と研究発表を組み合わせるというイベントを行った(11月11日「バザン・レリス・闘牛」)。こうした公開研究の場を今年度も継続する。これについては、科研の研究代表者の勤務地で隔年で開催されている映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭とのあいだで協力を結びながら進めていく。
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